何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

R-1ぐらんぷり 2016

現在ゴールデンで全国放送しているお笑い賞レースの中ではM-1グランプリに次いで歴史が長いこの大会。優勝者がブレイクできなかったりルールがコロコロ変わるため、小粒な大会という印象が拭えなかったが、昨年から始まった「敗者復活枠3人」というルールが功を奏したのか、盛り上がりのある番組になってきたように思う。

 

Aブロック

ウザい音楽プロデューサーがドラえもんの歌に指導を入れていく。ただの形態模写に終わらず音ネタも取り入れてくるあたり進化を感じさせる。本人も煽りVで言っていたが賞レースでの優勝経験が無い。かつてのM-1における麒麟のように、器用過ぎるところが仇になっているのかもしれない。

小島よしお (勝ち上がり)

ビジーフォーがよくやってた3人のヤツを携えてショートコント+そんなの関係ねぇ。ベッキー騒動に揺れるサンミュージック所属とあって「俺が事務所を背負って立つ」という気概をヒシヒシと感じた。先日の水曜日のダウンタウンでも「この3人のヤツ誰がやっても面白い説」という企画が放送されたが、プロデューサー曰く偶然カブってしまったとのこと。

シャンプーハット こいで

食物連鎖。今大会一番狂っていたネタ。イラストの上手さに対して内容が意味不明過ぎる。

サンシャイン池崎 (敗者復活枠)

心理テスト。サンシャイン池崎というキャラクターが完全に固まっており、もはや内容は何でもいいという様相。

Bブロック

モノマネ。あらびき団を観ていた人にはお馴染みだが一般的な知名度はまだ高くない。テレビ越しで観ていても会場の揺れ方が他と明らかに違っており、いくらメチャクチャで万人受けしないネタとはいえ優勝させない訳にはいかなかったと思う。清水ミチコの「よく今まで売れなかったですね」というコメントが全て。
 
おいでやす小田
バイト面接。完全にザコシショウの煽りを食ってしまったが、個人的には一番面白かった。こういうフリが効いててオチがしっかりしてるネタはザコシショウのようなネタと比べると途端に真面目に映ってしまうので気の毒。
 
サプライズ。確実に友近柳原可奈子のラインを受け継ぐ女性人間観察コント師の有望株。今回のネタもいつもよりストーリー性があり決して完成度は低くなかったが、もっと毒があっても良いのにと思った。
 
ルシファー吉岡 (敗者復活)
教師。名前は知っていたがネタは初めて見た。下ネタな時点で好みが分かれるが、ザコシショウが荒らした後だったのが逆に良かったか。「こういうヤツがiPhone作るぞー」というフレーズにセンス。
 

Cブロック

ことわざ。やはり去年のインパクトを超えるのは難しかった。
 
落ち着いて行きやー。芸人として恵まれた見た目に加え発想力、動きのキレ、声の通りの良さなどNSC首席卒業も納得の逸材。2本目に違うタイプのネタも観たかった。
 
高校球児講座。去年一世を風靡した全裸ポーズのネタを封印。今回のネタはどちらかというとアームストロング時代を彷彿とさせた。
 
マツモトクラブ(敗者復活)
父親との再会。セルフナレーションという独自の芸風で去年のR-1以来急激に注目度が上がった。会場の空気を掴むのが上手く、ネタ直後は勝ち上がったかと思った。
 

 

2016年 冬ドラマ途中経過

1月スタートの連ドラをザッと視聴したので、内容の傾向を分析しつつ感想をまとめてみた。
 

時代劇がおもしろい

今年の目玉といえば堺雅人主演、三谷幸喜脚本の大河ドラマ真田丸」。2話まで視聴した感じだと、主人公の真田信繁真田幸村)の物語というよりは、真田、織田、徳川、上杉、北条の行く末を平行して描いていくようで、キャストの濃さもあって1年間楽しませてくれそう。物語は武田家の終焉から始まったが、偉大な武将・武田信玄を父に持つ武田勝頼の悲哀を演じた平岳大が今のところMVP。
木曜時代劇「ちかえもん」は替え歌あり、アニメありの破天荒な時代劇。スランプに悩む浄瑠璃作家・近松門左衛門を演じる松尾スズキがなんとも愛らしくて笑ってしまう。安定の朝ドラ「あさが来た」も含め、時代劇が充実しているクール。
 

重い・暗いシリアス路線

重いテーマを扱った作品が多いのも今期の特徴。
その中で夫による妻へのDVを扱っているのが「はぶらし/女友だち」と「ナオミとカナコ」。どちらも女性2人をメインとしたサスペンスで内田有紀が出演。「ナオミとカナコ」の高畑淳子演じる中国人女社長は一見の価値あり。
冤罪をテーマにした「逃げる女」は疑心暗鬼の世界を映画的な繊細さで描いている。臓器提供のために教育された3人の男女の物語「わたしを離さないで」は最初の2回をほとんど子供時代に費やすという攻めた姿勢。
閉鎖された田舎から東京へ飛び出した若者のラブストーリー「いつかこの恋を思い出して泣いてしまう」は月9とは思えない暗さで、従来のこの枠の視聴者層に合わないのは明らか。ただ胸に刺さるセリフやシーンは坂元裕二ならでは。

アットホームなコメディー

対照的に安心して観られるコメディタッチの作品も多数。

ダメな私に恋してください」は「あさが来た」でブレイク中のディーン・フジオカを愛でるドラマかと思いきや、深キョンの可愛さを再確認させられる。「家族ノカタチ」は結婚不適合者の主人公と奔放な父親の共同生活から始まるホームコメディ。ここ何年かで大作枠になりつつある日曜劇場としては薄味。「お義父さんと呼ばせて」はオドオドした遠藤憲一を堪能できるが、同じ方向性の「民王」に見られたようなギャグのキレやブラックさはあまり無く、安心はできるが少々物足りない。

大河は別枠として、脚本は勿論のこと映像、音楽、衣装にも拘りが見られる「ちかえもん」「逃げる女」「わたしを離さないで」が個人的トップ3。「ナオミとカナコ」は高畑淳子を楽しみに視聴。


微妙にズレてるフジテレビ

先日放送された「新春TV放談」。NHKの番組ではあるが、その内容は民放も含めたテレビ番組について語るというもので、今回主に話題に挙がっていたのはフジテレビの凋落について。昨年もこのことが議題に挙がっていたが、それも仕方ないと思えるほど近年のフジテレビは絶不調だ。かつて数えきれないほどの名バラエティ名ドラマを届けてきた局だけに、玄人素人関係無くネット上ではこの現状を嘆いたり原因を分析する人が多い。
ここ最近のフジテレビの番組を観ていて気になるのは、制作側と視聴者側の「ズレ」だ。映画化を前提にスタートしたのにドラマ史に残る記録的低視聴率だった「HEAT」はその象徴で、ドラマの内容についても酷評意見が散見された。こういった現象は視聴者との「大きなズレ」が原因だ。
しかし、内容は悪くなかったのにイマイチパッとしなかった番組というのもある。
バラエティで言うと既に終了した「オモクリ監督」。元々深夜で放送していた「OV監督」がビートたけしをMCに加えゴールデン進出した番組。芸人やアーティストなどがテーマに沿ったショートムービーを作成するという内容で、MCであるビートたけしが作品の批評だけでなく自ら作品を作る贅沢な回もあった。内容は決して悪くなかったが、この番組の一番の問題点は時間帯。よりにもよって日曜9時という激戦区では、なかなか観る人もいないだろう。やはり従来の深夜枠が一番しっくりくる番組だった。
ドラマでは昨年7月クールに放送された「リスクの神様」。主演の堤真一を始めとして古田新太小日向文世吉田鋼太郎など近年の朝ドラで重要な役柄を演じた俳優たちが集結した作品。しかし同クールのHEATの陰に隠れて目立たなかったものの視聴率は3%台に乗ることもあるなどかなり厳しい結果となった。これもやはり時間帯、もっと言えば放送するテレビ局を間違えた番組だった。画面の暗さや硬派な作りなどはNHKの土曜ドラマのようだったし、夏にこういうドラマが観たいかというと疑問だった。
2016年に入って放送された単発番組「女性作家ミステリーズ 美しき三つの嘘」は湊かなえ三浦しをん角田光代の小説をドラマ化したもので、役者の熱演もあり1つ1つの作品は質が高かったのだが、3つとも女性同士の友情をテーマにした後味の悪い作品だったため、観終わった後はなんだか疲れてしまった。同局の名物特番「世にも奇妙な物語」が5話構成でもダレずに楽しめるのはホラーからコメディ、感動ものまで様々なタイプの話を組み合わせているからだと再認識。しかしもっと問題なのは「どう考えても正月にやるような企画ではない」ということ。
以上の3つの番組は「内容」よりも「放送する時期・時間帯」における違和感という「微妙なズレ」を含んでいる。「内容」に纏わる「大きなズレ」も勿論問題だが、フジテレビにはこの「微妙なズレ」の方も重要視してほしい。「良い番組を作りたい」という意欲は十分伝わっているのだから。

2016冬ドラマ 期待作品

1月スタートの連ドラの情報が出そろったので、個人的に気になる作品をピックアップ。

はぶらし/女友だちNHK BSプレミアム・火曜23時15分 1/5スタート)
近藤史恵のサスペンス小説が原作。主人公のもとに高校時代の同級生が一人息子を連れて転がりこみそのまま居ついてしまい、生活のペースを乱されていく様を描く。池脇千鶴がトラブルメーカー役をどう演じるのか気になる。

逃げる女NHK・土曜22時 1/9〜)
児童殺害の冤罪で8年間服役していた主人公が出所。自分のアリバイを否定した親友を探し出すため旅に出る。親友役が最近話題になった田畑智子なのはタイムリーと言うべきか。
 
大河ドラマ 真田丸NHK・日曜20時 1/10〜)
2004年の「新選組!」は自分が唯一初回から最終回まで毎週見届けた大河ドラマなので、同じ三谷幸喜脚本でしかも同作品でブレイクした堺雅人が主演というのは感慨深い。ここ5年ぐらいは朝ドラの好調ぶりに反して大河は影が薄くなっているので、ここらで元気な作品を見たい。
 
フラジャイル(フジ・水曜22時 1/13〜)
裏の日テレとのドラマ対決が取り沙汰されてきた枠ながら今回で一旦ドラマ枠は終了。最後を飾る作品は病理医が主人公の漫画原作モノ。長瀬は「ムコ殿 2003」以来13年ぶりのフジテレビドラマ主演とのこと。「僕の生きる道」でお馴染みの橋部敦子がフジテレビ火9枠最後のドラマ「ゴーストライター」に続き脚本を担当。フジテレビ的には「困った時の橋部敦子」なんだろうか。最後くらいは日テレに勝ちたいところだが、向こうは結婚後初主演の堀北真希で話題性があるし、どうなるか。
 
木曜時代劇 ちかえもんNHK・木曜20時 1/14〜)
松尾スズキ近松門左衛門役に据えて、人形浄瑠璃曽根崎心中」の誕生秘話を人情喜劇として描く。脚本は「ちりとてちん」「夫婦善哉」の藤本有紀。一風変わった時代劇になりそう。

スペシャリスト(テレ朝・木曜21時 1/14〜)
出演:草彅剛、南果歩芦名星和田正人夏菜平岡祐太
過去に数度特番として放送された作品が満を持して連ドラ化。無実の罪で10年間刑務所にいた京都府警の主人公が難事件を解決していく。連ドラ化にあたって舞台は京都から東京へ移る。
 
ナオミとカナコ(フジ・木曜22時 1/14〜)
Dr.伊良部シリーズなどで有名な奥田英朗の同名小説が原作。普通のOLと主婦だったはずの2人が夫殺しの完全犯罪を遂行するためタッグを組む。内田有紀は「偽装の夫婦」に続いてDVを受ける主婦役(ちなみに「偽装~」では主人公がこの「ナオミとカナコ」を読むシーンが出てくる)。
 
わたしを離さないで(TBS・金曜22時 1/15〜)
カズオ・イシグロによるベストセラー小説が原作。世間から隔離された施設で育った3人の男女の数奇な運命を巡るサスペンス、といういかにも金曜ドラマ的な内容。脚本が「JIN-仁-」「天皇の料理番」の森下佳子ということで俄然期待が高まる。
 
東京センチメンタル(テレ東・金曜24時12分 1/15〜)
出演:吉田鋼太郎高畑充希片桐仁、大塚寧々
テレ東だが出演者の顔ぶれがNHKっぽい。和菓子職人でバツ3の主人公のラブストーリー。地味に良作の香りがする。
 
家族ノカタチ(TBS・日曜21時 1/17〜)
「結婚しない男」という等身大の人物像を演じる香取慎吾とコメディ巧者・西田敏行のやり取りに注目。下町ロケットとはだいぶテイストが異なるがどうなるか。脚本は「チーム・バチスタシリーズ」「銭の戦争」の後藤法子

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(フジ・月曜21時 1/18〜)
最近の月9は軽いノリの作品が続いたが、普段民放ドラマに出ない高良を起用、さらに「東京ラブストーリー」「最高の離婚」の坂元裕二脚本と来れば、久々に中身の濃い月9が見られるかもという期待が。

お義父さんと呼ばせて(フジ・火曜22時 1/19〜)
同じ51歳の男2人が"娘の親"と"恋人"という立場で対立する。達者な俳優2人がW主演ということもあって、遠藤主演の「民王」を彷彿とさせるコメディ作品になりそう。脚本は「医龍シリーズ」「アイムホーム」の林宏司
 
秋ドラマは力の入った作品が多いと思ったが、冬ドラマも期待感のあるラインナップ。こうして並べてみるとフジテレビのドラマに気になる作品が多い。夏、秋のような惨状にならないように力を入れているのがわかる。肝心の内容の方も期待を裏切りませんように。

真田丸 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

真田丸 前編 (NHK大河ドラマ・ストーリー)

ナオミとカナコ

ナオミとカナコ

わたしを離さないで

わたしを離さないで



2015秋ドラマ総括

今クールは色んな作品が話題になり激戦の中、視聴率では下町ロケットが1位に。池井戸作品なので話の面白さは保証されてるとして、独特なキャスティングが功を奏している部分もあればそうでない部分もあり、その点で好みが分かれたと思う。そんな中で小泉孝太郎の悪役ぶりや弁護士役の恵俊彰池畑慎之介は良い味を出していた。個人的には第2話の裁判シーンが特に好きだった。

下町ロケットに負けないくらい作り込まれていたのがコウノドリ毎回本物の新生児が登場するのは物語の説得力が増したし、出産にまつわる様々な問題にスポットを当てたのは単純に勉強になった。レギュラー陣もゲスト役者も皆演技が素晴らしく、所謂捨て回というのが無かった。中でも第5話に中学生の妊婦として登場した山口まゆの出産シーンは凄まじかった。彼女は「アイムホーム」「ナポレオンの村」にも出演していたが、調べたら去年デビューしたとのことで驚いた。これから要注目の女優。

偽装の夫婦は第8話での天海祐希キムラ緑子による演技のぶつかり合いが白眉。惜しむらくはこの回が最終回では無かったこと。主人公が人間嫌いを克服する物語としては面白かったが、そこにLGBTの要素を絡めるのは難易度が高かった模様。役者は全員生き生きしていて良かった。

無痛〜診える眼〜は先の読めない展開が視聴意欲を湧かせた。ドラマ全体に充満する不気味な空気感をほぼ1人で体現していた中村蒼の役者魂に拍手。特にストーカーを生きたままオペするシーンは最近のドラマの中で最もおぞましかった。ただ内容のシリアスさ・グロテスクさの割りに緊張感に欠ける部分もあり、また複数の話を同時進行した割には最終回でどれも不完全燃焼に終わった感。

個人的な作品賞はコウノドリ
主演女優賞は天海祐希(偽装の夫婦)
助演男優賞は中村蒼(無痛〜診える眼〜)
助演女優賞は吉田羊コウノドリ
新人賞は山口まゆコウノドリ

M-1グランプリ2015

2010年に一旦幕を閉じたM-1グランプリが今年5年振りに復活。5年前と違うのは①芸歴制限がコンビ結成10年から15年に変更②審査員が歴代のM-1王者ということ。審査員に関しては歴代全ての優勝コンビ(の片方)が揃っているように見えるが、実はアンタッチャブルだけ両方とも参加していない。諸々の事情で2人揃ってテレビ出演することもめっきり無くなったコンビなので仕方ないと言えばそうなのだが、一抹の寂しさを覚える。

以下各ネタ感想。
 
アニメ「スペースコブラ」を意識したという金髪&上下赤の衣装が鮮烈なカズレーザーと、ドラマでナンシー関を演じ「生き写し」と絶賛された安藤なつによる男女コンビ。ちなみにカズレーザーはさらば青春の光東口と大学時代にコンビを組んでいた経歴がある。一見するとどちらがボケかわからない程見た目のインパクトが強い2人だが、どっしりしたツッコミの安藤と軽いノリで予測不能のボケをするカズレーザーという役割。内容は見た目ほど変化球ではないものの、ブラック過ぎずベタ過ぎないちょうどいい塩梅のネタだったと思う。それでもカズレーザーの「やべー奴」感はそこはかとなく感じ取れた。ボケの発想には非凡さを感じるが、技術・構成の面であまり点数が稼げなかった模様。でも2本目も見たいと思った。
 
馬鹿よ貴方は
去年のTHE MANZAIで注目された異様な存在感のコンビ。ファラオの突拍子も無い不気味なボケを受け入れられるかが全てなので、会場の受け入れ体制が整って無いと厳しい戦いになると思ったが、THE MANZAIの時よりは善戦していた。特に後半の「大丈夫」連呼ゾーンでは観客(と上戸彩)を惹き込んでいた。暫定席で敗退が決まった時の「やっとM-1らしくなってきましたね」はベストコメント賞。
 
のび太風の田中とジャイアン風の武智による好対照なコンビ。と言っても2人の関係性を駆使したしゃべくり漫才ではなく、田中がコントに入り武智が第3者目線でツッコむという形式。前半の伏線を終盤で一気に回収する構成の上手さが目立った。しかし以前THE MANZAIに出た時と同様に大会を通してのインパクトは今ひとつに終わってしまった。あと審査員のパンクブーブー佐藤がコメントしていたように、今回のファイナリストのネタは心の闇が反映された物が多く、それが今のトレンドとは言えこう立て続けに見せられると食傷気味になってしまう部分もある。これは近年のキングオブコントにも言えることで、この流れが今後も続いていくのか断ち切られるのか気になるところ。
 
和牛
世間的には当たり前とされている風潮にボケの水田が難癖をつけていくスタイルで、観ている側がどんどんダメージを受けていく。ツッコミの川西の受け身の芝居も上手い。ただ「結婚式を抜け出す花嫁」というシチュエーションはドラマでは"あるある"でも実際にはまず起こり得ないので、NHK新人お笑い大賞でやった「キッチンでのカップルのやりとり」の方が共感しやすさという点で面白かったように思う。
 
ジャルジャル(初戦1位通過・最終順位3位)
5年前のM-1で漫才の概念をぶち破るようなネタをして物議を醸したコンビ。今回も多少のメタ要素はありつつも、5年前よりはずっと正統派のしゃべくり漫才に寄せていた。とはいえ、審査員の中川家礼二があまり評価してなかったり、Twitter上でも評価が真っ二つに分かれているのを見ると、これだけ賛否両論なネタを作れることに逆に感心する。ネタの内容はコント師らしいある法則に沿って展開するシステム型。しかし礼二が指摘したようにシステムを見せたい感が前面に出過ぎたかもしれない。ここは本当に観る人によって好みが分かれる。
 
銀シャリ(初戦3位通過・最終順位2位)
昭和風の出で立ちでとにかく橋本のツッコミの上手さが際立つコンビ。同タイプの学天即と比べると銀シャリの方がツッコミの主張が抑えめでボケを食い過ぎていない。このコンビはボケの鰻の天然ぶりも味となっているので、冒頭の「ベルリンの!?」で掴んだのは良かった。言い回しの面白さは文句無いのだが、パンブー佐藤の指摘にもあったように題材の平凡さ・漫才の教科書通り感がちょっと勿体無い。もっとこの2人ならではの漫才ができると思う。
 
ハライチ
鉄板のノリボケ漫才を封印して挑んだというだけでもこの大会に対する本気が感じられる。ただいつもと違い岩井のサイコな世界観が前面に出るネタだった分、その世界観を受け入れるまでに時間がかかってしまい澤部のツッコミで笑う体制にならなかった。終盤の贅沢あるある的なくだりでやっと乗ってきたと思ったが、時すでに遅し。岩井が終始噛み気味なのも良くなかった。
 
2005年のM-1以来10年ぶりの決勝。爆笑オンエアバトルでよく観ていたこともあり、当時はこのコンビが好きで応援していた。しかしその時披露したネタはこのコンビの中でも上出来のネタとは言えず、それ以来勢いが落ちてしまった印象がある。今回も当時と同様ボケの関のデブ押しのネタだったが、当時より完全に空気を掴んでいた。会場のウケ量の割に点数が伸びなかったのは、2人のやり取りより言い換えの面白さで笑いを取っていたこと、後半どんどんコントっぽくなっていったこと、途中で2人の役割が入れ替わったことなどが減点対象だったんじゃないかと勝手な推測をしてみたが、一番低得点をつけたチュートリアル徳井のコメントをとりあえず聞きたかった。
 
トレンディエンジェル(敗者復活枠・初戦2位通過・優勝)
このコンビがストレートで決勝行きしなかったと聞いた時点で敗者復活からの優勝もあり得ると思っていたが、やっぱりその通りになった。どんな場面でも笑わせる力があり、加えて時事ネタを積極的に取り入れる貪欲さもある。よくあれだけハゲネタのバリエーションが思いつくなと感心する。こういう軽い芸風のコンビが優勝するのは納得しない人もいそうだが、今回の中で一番自分たちのスタイルを確立していたという意味で個人的に文句無く優勝だった。
 
ネタ以外の部分ではやはり歴代チャンピオンの審査が一番の注目どころだったが、中川家礼二ますだおかだ増田の貫録が凄く、過去の審査員の中に混じっても違和感無いのではと思うほどだった。しかし一番良かったのは全コンビのネタがよくウケたこと。去年のTHE MANZAI、今年のキングオブコントと「なぜここで笑いが起きない?」という場面を何度も観てきたので、それが懸念材料だった。今後もこんな感じでお願いしたい。

世にも奇妙な物語 映画監督編

先週の「傑作復活編」に引き続き、番組放送25周年記念企画として放送された「映画監督編」。以下各話感想。

 
研究室で何者かに殴られ気絶した主人公。気が付くと棺桶の様な箱の中に閉じ込められていた。箱の中にあった誰の物かわからないiPhoneを使って警察に助けを求めるが、なかなか救助は来ず...。
「箱の中に閉じ込められる」というシチュエーションは想像しただけでも恐ろしい。竹内結子がパニック具合を熱演。予告の時点で映画「リミット」のパクリだという指摘がネット上で多く見られたが、結末は違った模様。「懲役30日」にも通ずる、地獄の時間が半永久的に続く恐怖。小さい頃に観てたら確実にトラウマになっていたと思う。
 
幸せを運ぶ眼鏡
主演:妻夫木聡 監督:本広克行(「踊る大捜査線」)
貯金はあるものの結婚に消極的だった主人公が婚活サイトで美女と知り合い、時を同じくして「幸せを運ぶ眼鏡」が届く。その眼鏡からの音声指示に従ったことで主人公は仕事も恋も順調に。しかし自宅で眼鏡のことを彼女に知られてしまい...。
妻夫木聡は2005年「美女缶」以来の出演。今回の話も、謎のアイテムを使って美女と恋人同士になって...という導入は「美女缶」の雰囲気が。冴えない主人公があることをきっかけに人生が好転していくという筋書きは世にもの王道パターン。故にどう落とすのか注目して観ていたが、喋る眼鏡の指示通りに動いていた主人公が本当の気持ちを取り戻すために眼鏡を破壊し、目出度く恋人と結ばれる...と見せかけて実はそれも眼鏡の指示通りで、主人公は幸せを運ぶコンタクトレンズを購入してその後の人生を過ごすというややブラックな内容。テイスト的には「仮婚」に近かった。
 
事故物件
主演:中谷美紀 監督:中田秀夫「リング」
小学生の娘と新居に引っ越してきた主人公は、家の中での奇妙な現象に悩まされるようになる。事故物件ではないかと疑うが、実は主人公は火事で娘を亡くしており、自責の念から娘の幻覚を創り出していたのだった。
中谷美紀は2001年「仇討ちショー」以来の出演。世にもの枠で放送するからにはただの心霊ホラーでないことは予想できたが、蓋を開けてみれば今回の感動枠。前半のホラー部分はさすがに怖く、それだけに最後まで同じテイストで通してほしかったという人もいるだろう。役柄的に中谷美紀のやつれ感がよく合っていた。
 
×(バツ)
主演:阿部サダヲ 監督:山﨑貴(「寄生獣」)
主人公が朝起きると額に×(バツ)のマークが浮かび上がっていた。そのマークは周りの人間には見えないらしく、医者に相談してもストレスだろうと一蹴される。しかし自分と同様に額に×マークのある男と出会い、その男がそれから程なくして死んだことにより、このマークは自分の死期が近いことを表しているのではないかと思い始める。
阿部サダヲは2007年「カウントダウン」以来の出演。「カウントダウン」は何かとんでもないことが起きると思わせて結局大したことは起きないという結末だったが、今回の話は自分は死ぬと思いきや、それ以上にとんでもないことが起きるという結末。感動的に終わるかと思ったが、エボラ出血熱を絡めてくるとは。正直今回のラインナップの中では意外と普通というか、期待を上回ってはこなかった印象。
 
嘘が生まれた日
主演:満島真之介 監督:清水たかし(「呪怨」)
この世は嘘のない世界。主人公はある日、落ちていた財布を持ち逃げしようとしたところを警官に問い詰められ、咄嗟に「自分のです」と主張し事なきを得る。事実と違うことが言えることに気付いた主人公は仲間と結託して詐欺行為で大金を得るようになる。
「嘘の無い世界」という不条理空間の中で「嘘をつく」という当たり前の行為が世紀の大発明のように扱われる、という不条理。発想の勝利。こういう作品は自分の知る限りでは世にもで観たことが無い。マクドナルドや野々村議員らしき人物(演:飛石連休・藤井)を登場させるなど風刺要素もあり。
 
名だたる映画監督を起用したこともあり、平均点の高い回だった。役者の演技が皆上手かったことも大きい。4つ目まで観た時点では正統派でちょっと綺麗にまとまり過ぎかと思ったが、「嘘が生まれた日」のような新しいタイプの作品もあったのは良かった。