何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

映画鑑賞記録「全員死刑」(ネタバレあり)

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主演・間宮祥太朗、監督・小林勇貴による「全員死刑」を観てきた。これまで本物の不良を使って映画を撮ってきた小林監督が初めて俳優を使って撮った映画で、間宮祥太朗にとっても初主演映画となる。この映画をわざわざ2時間かけて隣の県まで朝イチで観に行ったのは、自分が間宮祥太朗ファンであることが大きな要因ではあるが、映画評論家の町山智浩氏が第2回町山大賞に選んでいた(第1回は「この世界の片隅に」)ということもあり、主演が誰であれ観ていた作品だと思う。

話のモデルは2004年の福岡県大牟田市での殺人事件。「冷たい熱帯魚」「凶悪」と同じプロデューサー。そして全員死刑という物騒なタイトルやポスタービジュアルから、どんな恐ろしい映画なんだと想像してしまうが、R15指定ということもあり殺人描写や性描写は驚くほどマイルド。同じ日活製作でR15指定、間宮も出演していた「ライチ☆光クラブ」の方がその点では過激だったように思う。

ではこの映画の何が鮮烈なのかと言えば、小林監督による演出に他ならない。複数の映画のオマージュがふんだんに盛り込まれているらしいが、自分の貧困なムービーリテラシーでは解説不能なため、その辺は他の方にお任せする。この映画で一番印象に残るのが忙しなく転換するBGMではないかと思う。クラシックからアゲアゲ曲、メタルコアまで多岐に渡るジャンルの音楽が作品を彩る。しかしあまりにも節操のない選曲のため、決して心地いい物ではなく、寧ろこれが原因でこの作品に嫌悪感を抱く観客もいておかしくない。自分も正直途中から「ちょっと過剰では?」と思いこの作品に対する評価を考えるところまで行ったが、ここまで押せ押せで来られると「逆にこれはこれでアリだな」と最終的には思わされてしまった。BGM以外にもカメラワーク、B級アメリカホラーのようなチープ感、状況説明の字幕など、「敢えて」やってますよ感が満載で、それが鼻につくという人もいると思う。自分も正直(略)

と、このように監督のやりたい放題な演出になっているのだが、肝心の話はと言えば、これが恐ろしく緊張感の無い、間の抜けた殺人記録なのだ。あらすじとしては父、母、長男、次男の4人が財産強奪のため資産家一家を襲うという物なのだが、毎回殺すのは次男のタカノリ(間宮)の役目。全部タカノリに丸投げの親や長男もクズだが、全て言う通りにするタカノリもやはりおかしい。つまり犯人を全くかっこ良く描いていないのだ。これもBGMの効果によるところが大きいと思うが、個人的には殺人シーンの時だけ取ってつけたようにかかる不穏なBGMがわざとらしくてツボだった。

そんな中で3人目、4人目を銃殺した後、それまで業務的に殺しを行なっていたタカノリに異変が起きる。兄に対して銃口を向けるのである。本人に殺す意思は無かったと思うが、あまりにも人を殺し過ぎたため、何かのスイッチが入り、自分を散々こき使ってきた兄への蓄積された思いがこの行動に移させたのだろう。ここは観ててスカッとしたし、個人的に一番好きなシーンだった。と同時に「殺人を犯すとこういうことも起きるんだろうなぁ」と想像できてしまった自分にゾッとした。

役者で言うと、主演の間宮祥太朗は最初正直この作品の登場人物としては顔が良すぎじゃないか?という懸念を抱いていた。そりゃあヤクザにもハンサムな人はいるだろうが、間宮はいくら何でも華があり過ぎる。しかし殺人を重ねる内に、くっきりだった二重がどんどん一重になり最終的にマジでこんな顔↓

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になっていたのはお見事だった。あとたまに垣間見せていたシャブ中の呂律の回らない演技がとても上手かったので、機会があればまたそういう役をやってもらいたい。

間宮に次いで出番が多かったのが長男役の毎熊克哉。一見するとタカノリよりよっぽど強面なのに、実際は口だけで何もしないという小者っぷりがギャップがあって良かった。一番最初の被害者であるユーチューバー・おわりたいちょーを演じた藤原季節も良い感じにムカつく演技をしている。予告で大々的に使われてるだけあって、彼のシーン(カレープール&全部チャラにしちゃえ〜♡)は画ヂカラがあった。六平直政と入絵加奈子による両親は頼りなさ過ぎて寧ろ最高。

町山氏が「地獄のサザエさん」と評するように、やってることは殺人なのに妙にほのぼの感が漂う怪作。実際の事件を題材にしてる云々よりも、映画として賛否が分かれる作品のように思う。自分はといえば、もう既に最初から観直したくてしょうがないので、すっかりこの作品の虜になっている。日本的な陰湿さは無く、アメリカ的なおバカでカラッとした感触なので後味は不思議と悪くない。意外と間口の広い作品となっているので、観られる環境の方はどうぞ劇場へ。

 

〈祝・映画初主演〉世間に見つかる前に押さえておきたい間宮祥太朗作品

このブログでは主にドラマやバラエティーの感想を綴って来たが、特定の人物について語った事はなかった。というのも自分がそこまで熱を入れて応援している芸能人がいないというのが一番の理由なのだが、そんな自分が2017年下半期に入り、ある俳優の出演作を買い漁るという事態に陥っている。その俳優というのが今回紹介する間宮祥太朗である。

端正ながら少し濃い顔立ちが特徴で、昨今の塩顔ブームに逆行している(皮肉にも塩顔の代表格である坂口健太郎や綾野剛と同じ事務所)。演じる役の幅がとにかく広いのだが、それはまた後述する。花の93年組と言われている神木隆之介福士蒼汰菅田将暉野村周平竹内涼真らと同い年。自分は今年になって初めて彼の事を認識したのだが、ポッと出の若手ではなく、中学生の頃から学園ドラマを中心にコツコツ出演してきたためキャリアは約10年。昨年頃からドラマの主演や話題作のメインキャストとしての出演が増え、今年ついに「全員死刑」で映画初主演。しかし一部の熱心なドラマ好きやイケメン好き以外からの知名度はまだまだのようで、彼の類稀な演技力を知ってしまった自分としては「早く間宮の良さに気付いて!」という気持ちと「まだ気付かないで!」という気持ちの狭間にいる状態。今回はなぜ自分がここまでこの俳優に入れあげているのかという根拠となる作品について解説していきたい。「全員死刑」で間宮のことが気になった方も参考までにどうぞ。

 

帝一の國 

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そもそものきっかけはこの作品だった。映画館にこの作品のメインキャラクター達の顔写真がデカデカと貼られており、その中でも一際目を引いたのが間宮祥太朗演じる氷室ローランドだった。金髪のロングヘアーに鋭い眼差し。正に漫画から出て来たかのような美麗なルックス。しかし劇中では暴力や金にモノ言わせるわ、ふんどし姿で太鼓演奏するわ、ほぼネタキャラ扱い。間宮のストロングポイントである美顔&美声&美尻&コメディセンスが遺憾無く発揮された現時点での代表作と言える。しかし実を言うとこの作品、大鷹弾役の竹内涼真目当てに観に行ったので、この時点ではまさか金髪の狂犬の方にハマることになるとは思いもしなかった。ちなみに11月29日にDVD/BD発売なので観てね!

 

ライチ☆光クラブ 

ライチ☆光クラブ

ライチ☆光クラブ

 

帝一の國と同じ古屋兎丸の漫画原作。何を隠そう自分を間宮沼に陥れたのがこの作品である。これを観るまでは「帝一」に加え当時放送中だったドラマ「僕たちがやりました」でのハイテンションで2.5枚目な役柄から、間宮祥太朗=面白美形お兄さんぐらいの認識でいたのだが、「ライチ☆光クラブ」における彼の演技はそのイメージを180度変える物だった。間宮が演じるのは怪しい中学生集団『光クラブ』の先導者・ゼラに異常な愛情を燃やす美少年・ジャイボ。まずビジュアルが恐ろしく美しい。ドラマやバラエティー番組で年相応の流行りの髪型・服装をしている間宮にはそこはかとない違和感を感じていたのだが、この作品の浮世離れした怪しい世界観にはドハマり。なるほどこれが彼の正しい使い方だったのかと合点がいった。

この作品、元々は80年代の舞台版がオリジナルで、以来数度舞台化されているため、映画版の間宮は4代目ジャイボということになるのだが、既にイメージが出来上がっている一番人気のキャラクターというハードルがありながら、彼なりの解釈で見事に演じている。作品自体のクセが凄い(エログロBL全部乗せ)のであまりこういうのに免疫が無い人には強くオススメできないが、役者・間宮祥太朗を語る上では外せない作品だと思う。

 

ニーチェ先生 

ニーチェ先生 DVD-BOX

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記念すべき間宮の初主演作となったドラマ。原作は同名の漫画で監督は「勇者ヨシヒコシリーズ」でお馴染みの福田雄一。本作で間宮が演じるのはクール&毒舌&無表情のコンビニ店員。コメディーなのだが、無表情ゆえにこの作品が一番間宮の顔面造形の美しさを堪能できたりする。この作品きっかけでコメディー作品のオファーが増えたんだとか。ほとんどスタジオコントみたいな物なので、普段ドラマを観ない人にもオススメ。


お前はまだグンマを知らない  

劇場版「お前はまだグンマを知らない」[DVD]

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こちらも漫画原作で主演作。ドラマと劇場版の両方が制作された。千葉から群馬に転校してきた主人公が様々なカルチャーショックを受けるという内容をかなりオーバー&ハイテンションで描いている。数々のコメディー作品に出演してそのセンスを発揮している間宮だが、この作品での彼は一際強烈。異様な変顔バリエーションに加え、ケツ出し&股間フラッシュも厭わないその姿勢には感心すると同時に「何もそこまで...」と心配になるレベル。ニーチェ先生とは顔も声もキャラも全く違うので「本当に同一人物が演じているのか?」と疑念を禁じ得ない。これも12/20にDVDのみ発売なので観てね!

 

闇金ウシジマくんザ・ファイナル

人気シリーズの最終作。若手俳優がこのシリーズに出る場合、大抵借金をする側としてキャスティングされるのだが、間宮が演じるのは債務者に無茶苦茶な労働を強いる極悪人・鰐戸三蔵。特殊メイクで坊主&一重になり鼻と口は隠してあるので、どうやったって間宮と気付きようもないのだが、間宮と知った上で鑑賞しても普段の彼の要素がどこにも見当たらない。某シーン(ラブシーンではない)では前貼りを初体験したと言うが、この人体張りすぎである。

 

ON 異常犯罪捜査官 藤堂比奈子 

 2話と3話に犯人役として登場。ライチ☆光クラブのジャイボにも通じる所謂ヤンデレキャラで、心が少年のまま成長してしまった猟奇的な殺人犯を熱演。この人は何の役をやっても良い仕事をするが、特にこの手の役を演じさせると強大な力を発揮すると感じる。各局ドラマスタッフの皆さんはもっと間宮に殺人犯の役を与えるべき。


以上は一部ではあるが、特に間宮の並外れた演技力を堪能できる物を選出。彼の不思議なところはこれだけ色んな役をこなすのに本人は全くストイックな感じではないこと(休日は録り溜めたお笑い番組を観てダラダラ過ごすらしい)。

最後に、ライチ☆光クラブのメイキングブックにて共演者の藤原季節(「全員死刑」でも共演)が間宮祥太朗を評したコメントを引用させて頂く。

天才です。努力とか精進って言葉がもっとも似合わない男。そこに立つ、そうしたら周りの人が彼を立たせる、そうしたら彼が役になってる、みたいなことが起きる人です 

映画 ライチ☆光クラブ 公式メイキングブック (玄光社MOOK)

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キングオブコント2017 感想

今年のキングオブコント、率直に言って凄い面白かった。少なくとも審査方法が変わってからの3年間の中では一番。そして今年ほどネタ順の重要性を感じた年は無かった。

 

このコールセンターのネタ、2014年のキングオブコントDVDに収録されている準決勝で既に見たのだが、正直そっちの方が自分は好みだった。あの保留中の変な歌をテレビでも聴きたかった。世間的には無名に近いコンビだが、今回のメンツの中だとまだ知名度ある方というのが今年のファイナリストのヤバさを物語っている。このコンビに関してはネタよりもその後のトークの方が印象に残った視聴者も多いのでは。ボケのふぢわらのまるで10年前からテレビに出続けているかのようなボケの放り込みぶりは、人によっては生意気に取られるだろうが、個人的には初期のインパルス板倉を思い出すので好き。今後テレビ出演が増えて欲しい。

 

設楽が「アメリカのコメディーみたい」と評していたように、ただただ目の前で起きていることが面白いというタイプのコント。もちろんお笑いなのでそれで全く問題無いのだが、キングオブコントを長いこと見続けていると、何かしらの狂気だとか見る側の想像力を掻き立てる余白だとかを欲してしまう。このトリオはもうENGEIグランドスラムに毎回出て良いと思う。

 

昨年大会と同様、山内の狂気が光るネタとワードセンスが光るネタの2種類で揃えてきた。本当に地肩が強いコンビだと思う。1本目は準決勝でも爆発したと聞いていたので評判通り爆笑した。2本目は昨年の「首が落ちるマジック」でも披露された山内のツッコミフレーズの面白さが炸裂。「先が無いやろ!」「目処が立ってんねん!」。正直2本目は、圧倒的な設定の強さを見せたさらばの直後だったので「ウエットスーツを脱がせる」という設定では弱過ぎるはずなのに、これだけ爆笑をもぎ取ることができるのは天晴れとしか言えない。優勝おめでとう。

 

 1本目はビジュアル的なキモさ、2本目は内面的なキモさを打ち出すことで幅を見せてきた。特に2本目の「ストーカー」は台本も田中の怪演も素晴らしく、個人的に一番好きなコントだったかもしれない。他の芸人が演じたらホラーコントになりそうなところを、2人の愛嬌でポップに仕上げており、このコンビが演じる意義を感じた。

 

卒業式でモテない男のコント。ただでさえキモキャラの権化みたいなアンガールズの直後な上、その前にかまいたちもイケてない男ネタをやってしまっていたので、ここもとにかく順番が悪かった。そこまでブ男でもないしね。このコンビのネタは初めて見たのだが、てっきり女性の山田さんのキャラを生かしたネタかと思いきや、終始普通の女子の役だったのが物足りなかった。「女5人集めろ!」の部分は準決勝では爆発してたんだろうなぁと思った。

 

自分が歴代キングオブコントで一番好きなネタが、2012年にさらばが披露した「イタトン」なのだが、今回の1本目「居酒屋」はその頃のさらばを彷彿とさせる原点回帰的なネタで個人的に嬉しかった。しかし三村の審査評「声に出して笑わなかった俺がいた」というのもわかる。さらばのネタって笑うより先に「よくそんなネタ思いついてよくその展開のさせ方できるな」と感心させられる物が多いので。2本目の「パワースポット」は他の番組でも見たが、やっぱり設定が抜群。このコンビは森田がツッコんでこそと思っていたが、このネタを見てからはその考えを改めさせられた。

 

今年のキングオブコントはこのコンビがブレイクして初めて完結すると思う。それくらいこの番組のスタッフの「にゃんこスターを売れさせたい!」という気概を感じた。元々はピン芸人同士だった二人が5ヶ月前にコンビを結成。それが決勝に来ているだけでも凄いが、松本人志が97点をつけた時はひっくり返った。コント界のルールと言えば「世界観を壊さない」というのが一番にあると思うのだが、彼らが披露したネタは「なんてハートフルなネタなんでしょう」というメタ視点といい最後のコンビ名紹介といい、悉く掟破りであった。その癖してツッコミの間やワードチョイスは完璧なあたりがまた憎たらしい。

さらばはこれの前の出番で本当に良かったねぇ...w

 

  • アキナ(7位)

煽りVの中で「自由な設定のコントを」的なことを言っていて、実際これまでのアキナのネタとは一味違ったネタではあったんだけど、いかんせんにゃんこスターの後では...。2014年の「取れへん」を見た時からアキナのネタはシュールな4コマ漫画のような味わいがあると思っていて、今回のネタはショートコント形式になってる分余計その印象が強くなったんだけど、この大会で勝つにはもっと爆発力が無いと難しいんだろうな。

 

数年前から準決勝では一番評判が良く、毎年決勝確実と言われながら涙を飲んできたトリオ。それまでの経緯を知っている者たちの間では今回の決勝進出で最も優勝の期待を集めていたが、まさかの最下位という結果に。では今回のネタが優勝に相応しかったかと言えば違うと思う。1回目にネタを見た時に思ったのは「え?めちゃめちゃコントメイクしてる?」ということ。今回のファイナリストのネタを振り返ると、がっつりメイクのコントを披露したのはこのトリオだけ。番組を通して見るとここだけ時間が10年くらい前で止まってしまっているような印象を受けた。コントの内容もなんだか色々詰め込み過ぎていて、間も詰まっているし、少し見辛かった。1本目は過去の代表作で良かったのになぁ。残念ではあるが、来年はテレビで爆笑をとっているGAGを見たい。

 

「母親をメシ呼ばわりする息子」というなかなか風刺の効いた設定で味わいがあったが、ここまで散々色んなコントを見てきた上でこのコンビが他より突出した部分があるかと言うと難しい。しかしメシに取り憑かれた少年の狂気を表現できるだけの演技力は今大会随一と言っていいと思う。

 

にゃんこスター後の3組は気の毒としか言いようがないが、優勝者、準優勝者は非常に良いところに収まったように思う。にゃんこスターはめちゃめちゃ流行って欲しいし、かまいたちは千鳥のようにじわじわと東京で浸透して欲しい。

 

 

This is かまいたち [DVD]

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さくらんぼ(Original)

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2017年秋ドラマ期待作品

例年通り気合入りまくりの秋ドラマ。今年も引くぐらい強力な作品揃いなので、初回を観る可能性の高いものを列挙。

 

わろてんか(月曜〜土曜8時・NHK 10/2スタート)★★★★☆

出演: 葵わかな松坂桃李濱田岳高橋一生鈴木保奈美鈴木京香竹下景子遠藤憲一

脚本: 吉田智子(「美女か野獣」「アオハライド」「君の膵臓をたべたい」)

吉本興業の創業者・吉本せいが主人公のモチーフ。この作品は何と言っても男性キャストの豪華さに尽きる。上に挙げた以外にも千葉雄大藤井隆大野拓朗など、とにかく女性視聴者を囲い込むことに尽力した感のあるキャスティング。宣伝スポットを見た感じだと「あさが来た」に近い印象。キャストは間違い無いし、脚本は近年映画のヒット作が多い吉田智子なので、大きな心配は無さそう。

 

トットちゃん!(月曜〜金曜 12時30分・テレビ朝日 10/2〜)★★★★☆

出演: 清野菜名松下奈緒小澤征悦高岡早紀竹中直人山本耕史

脚本: 大石静(「ふたりっ子」「セカンドバージン」「家売るオンナ」)

わろてんか」に懸念があるとすればこの作品の存在だろう。以前NHK黒柳徹子の半生をモデルにした「トットてれび」が放送された時に「これを朝ドラにすれば良いのに」と思ったが、その理想を現実にしてしまった作品。脚本は「ふたりっ子」「オードリー」と2つの朝ドラを手掛けた大石静で、おまけに放送開始日も一緒となれば、朝ドラに宣戦布告していると思って間違い無い。ハードル上がりまくってる朝ドラと比べると、フラットに観られる分トットちゃんの方が個人的には楽しみ。

 

奥様は、取り扱い注意(水曜22時・日テレ 10/4〜)★★★★☆

出演: 綾瀬はるか広末涼子、本田翼、西島秀俊

脚本: 金城一紀(「BORDER」「CRISIS」)

金城一紀が女性向けドラマ枠でお馴染みの日テレ水曜でドラマを書くと聞いた時は「水と油みたいな組み合わせだな」と思ったけど、「精霊の守り人」で高い身体能力を発揮している綾瀬はるかのアクションシーンがあるとなれば納得の企画。綾瀬はるかの可愛さとアクションのキレが両方生かされれば、かなり面白い作品になると思う。

 

さくらの親子丼(土曜23:40・フジテレビ 10/7〜)★★★☆☆

出演: 真矢ミキ、吉本実憂本仮屋ユイカ

脚本: 清水有生(「あぐり」「すずらん」)

古本屋の店主を主人公とした人情ドラマ。あぐりすずらんも好きな朝ドラだったので、ちょっと期待。

 

フリンジマン(土曜24時20分・テレ東 10/7〜)★★★★☆

出演: 板尾創路大東駿介淵上泰史森田甘路、東幹久、村松利史

脚本: 根本ノンジ(「居酒屋ふじ」「銀と金」)、守口悠介(「相棒」)

原作: 青木U平「フリンジマン」

 愛人教授(ラマン・プロフェッサー)と呼ばれる男が愛人の作り方を指南していくという一風変わった不倫ドラマ。

 

ドクターX(木曜21時・テレ朝 10/12〜)★★★★☆

出演: 米倉涼子内田有紀遠藤憲一鈴木浩介田中圭段田安則岸部一徳西田敏行大地真央草刈正雄陣内孝則野村周平永山絢斗

脚本: 林誠人寺田敏雄、香坂隆史

 いつものヤツ。毎シリーズ出演者が豪華だけど、今期はもう映画並みでは?

 

刑事ゆがみ(木曜22時・フジ 10/12〜)★★★☆☆

出演: 浅野忠信神木隆之介

脚本: 倉光泰子大北はるか、藤井清美

原作: 井浦秀夫「刑事ゆがみ」

近年苦戦が続いているフジ木曜10枠。今期はあまり刑事ドラマが無い分、安パイに逃げてしまった感。「2人の演技は良いんだけどね...」とならないことを祈る。

 

コウノドリ(金曜22時・TBS 10/13〜)★★★★★

出演: 綾野剛松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、星野源大森南朋

脚本: 坪田文、矢島弘一、吉田康弘

原作: 鈴ノ木ユウコウノドリ

 前作はほぼ毎回泣いてた気がするほど名作だったけど、同クールの下町ロケットの影に隠れてしまった感があったので、今回はもっと評価されてほしい。と言っても今回も陸王が持っていく可能性は十分あるのだけどw

 

セトウツミ(金曜24時52分・テレ東 10/13〜)★★★★☆

出演: 高杉真宙葉山奨之

脚本: 宮崎大

原作: 此元和津也「セトウツミ」

 菅田将暉池松壮亮で映画化もされた作品。会話劇中心なので演技力が必要となるが、この2人なら大丈夫だろう。

 

先に生まれただけの僕(土曜22時・日テレ 10/14〜)★★★★☆

出演: 櫻井翔蒼井優多部未華子瀬戸康史井川遥風間杜夫高嶋政伸

脚本: 福田靖(「HERO」「龍馬伝」)

商社マンだった主人公が高校の校長に就任し、教育現場の様々な問題に直面する社会派ドラマ。気楽に観るタイプの作品が多いこの枠にしてはキャストも内容も硬派な感じ。

 

陸王(日曜21時・TBS 10/15〜)★★★★★

出演: 役所広司山崎賢人竹内涼真寺尾聰

脚本: 八津弘幸(「半沢直樹」「下町ロケット」)

原作: 池井戸潤「陸王」

足袋業社の社長がランニングシューズの開発をするまでを描く日曜劇場×池井戸潤の盤石の作品。帝一の國ひよっこ過保護のカホコと今年は当たり役が続く竹内涼真がまたしても物語のキーパーソンである陸上選手役に抜擢。どんだけ売れるんだ。

 

民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜(月曜21時・フジ 10/16〜)★★★☆☆

出演: 篠原涼子高橋一生古田新太余貴美子石田ゆり子田中圭千葉雄大前田敦子

脚本: 黒沢久子(「キャタピラー」「お父さんと伊藤さん」)

前クール「コード・ブルー」のヒットで復調の兆しを見せた月9枠。役者は人気者・実力者を揃えているし、政治というテーマも悪くないんだけど、捻りの無いタイトルで損してる上に「平凡だった主婦が全く別の世界へ」という設定が「セシルのもくろみ」の真木よう子を彷彿とさせて不安。

 

明日の約束(火曜21時・フジ10/17〜)★★★★☆

出演: 井上真央仲間由紀恵及川光博、工藤阿須

脚本: 古家和尚(「ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子」「任侠ヘルパー」)

久々の民放主演となる井上真央が演じるのはトラウマを抱えるスクールカウンセラー。前クールの「僕たちがやりました」で9時台とは思えない攻めの姿勢を見せたカンテレ枠だが、今作もなかなかヘビーな作品になりそう。

 

監獄のお姫さま(火曜22時・TBS 10/17〜)★★★★★

出演: 小泉今日子満島ひかり菅野美穂夏帆、坂井真紀、森下愛子伊勢谷友介

脚本: 宮藤官九郎

今最も注目度の高い火10ドラマ、今期は満を持してのクドカン作品。元服役囚の女たちがメインキャラという突飛な設定だが、これはもう女優陣の演技と会話劇を楽しむのみ。

  

重要参考人探偵(金曜23時15分・テレ朝 10/20〜)★★★☆☆

出演: 玉森裕太小山慶一郎新木優子古川雄輝

脚本: 黒岩勉(「謎解きはディナーのあとで」「貴族探偵」)

原作: 絹田村子重要参考人探偵

なぜかよく死体に遭遇してしまう主人公とそのモデル仲間を中心とした謎解きミステリー。古川雄輝が可愛いので観る。

 

片想い(日曜22時・WOWOWプライム 10/21〜)★★★★★

出演: 中谷美紀、桐谷健太、国仲涼子大谷亮平鈴木浩介

脚本: 吉田紀子(「Dr.コトー診療所」「変身」)

原作: 東野圭吾「片想い」

 中谷美紀性同一性障害の主人公を演じる。殺人事件も絡んだスリリングな作品になりそう。

 

TBSの3作品とわろてんかvsトットちゃん!の帯ドラマ対決、金城一紀×綾瀬はるかの化学反応が見もの。

 

 

陸王

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セトウツミ 1 (少年チャンピオン・コミックス)

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片想い (文春文庫)

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2017年夏ドラマ ザッと感想

怪獣倶楽部 ★★★☆☆

ちょっと期待し過ぎた。「アオイホノオ」を観る前だったら楽しめたかも。

 

過保護のカホコ ★★★★★

今期一番楽しみにしているドラマ。高畑充希の上手さもさることながら、何と言っても竹内涼真の少女漫画に出てきそうな男の子感が最高。リアルに毒親黒木瞳もハマり過ぎてて怖い。たくさんいる登場人物もそれぞれキャラが立っているし、遊川和彦はつくづく連続ドラマを作るのが上手い。

 

セシルのもくろみ ★★☆☆☆

今期ドラマでダントツ低い数字を記録しているが、そこまで酷くないんじゃ?と当初は思っていたものの、同じファッション業界が舞台&主婦を主人公としているカンナさーん!と比べてしまうと、視聴者は真木よう子より圧倒的に渡辺直美の方に共感するよなぁ。真木よう子のキャラは原作から改変してるそうだけど、今回はどうも失敗してしまったなぁという印象。

 

ごめん、愛してる ★★★☆☆

まんま韓流ドラマ過ぎて展開も予想できるが、役者の演技と宇多田ヒカルの主題歌が良いので観ている。長瀬が意外と役にハマっていてそこは嬉しい誤算。そして池脇千鶴の凄さを再認識。

 

愛してたって、秘密はある。 ★★★☆☆

キャストと主題歌は「Nのために」臭がするし、過去を知る人物から脅迫文書が送られてきたり展開が遅い所は「リバース」みたいだし、湊かなえドラマを日テレでやってみました感。小出恵介の代役となった賀来賢人は良い演技をしている。

 

アキラとあきら ★★★★☆

演出のクセが無い半沢直樹。日曜日観るもんねぇわーとお嘆きの方はこちらをどうぞ。

 

ハロー張りネズミ ★★★★☆

まったりした雰囲気で大人向け。初回こそゴールデン向けにマイルドな作りになっていたが、第3話は結構アクションシーンが本気だったり、今後尻上がりに面白くなる可能性あり。

 

悦ちゃん ★★★★☆

完全に朝ドラ。脚本の櫻井剛は「表参道高校合唱部!」以来注目しているが、本家朝ドラに登板されるのも時間の問題。

 

僕たちがやりました ★★★★☆

キーパーソンとなるパイセン役の今野(元キングオブコメディ)のジョーカーぶりが光る。できればもっと遅い時間で観たかった。

 

カンナさーん! ★★★☆☆

「逃げ恥」以降好調の枠だが、大して面白くなくても高視聴率を取るという朝ドラ現象が早くも起き始めた。ただ、渡辺直美が主役というだけでドラマの個性が出ており、異彩を放っている。演者は良いだけに、脚本もっと頑張れ。

 

わにとかげぎす ★★★★☆

有田の演技が上手いのと、本田翼が正しい使われ方をしている所が高評価。

 

黒革の手帳 ★★★★☆

観る予定では無かったが、武井咲がいつものアニメ声を抑えて好演している。しかしまだ23歳なのか武井咲仲里依紗も大暴れで本領発揮。

 

下北沢ダイハード ★★★★★

1話2話共完成度高し。しかし二週連続でおじさんの裸。

 

あいの結婚相談所 ★★★★☆

育三郎による育三郎のためのドラマ。最早ストーリーどうでもいい。このままドラマ出続けていくと、彼は三上博史のポジションになっていくんだろうなと思った。

 

 

竹内涼真写真集 『1?』

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Congratulations/あいのデータ(初回限定盤)(DVD付)

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データで見る2017年4月ドラマ

「視聴率でドラマの良し悪しを測るのはもう古い」と言われる昨今。それでは視聴率以外のデータでドラマの評価を見るとどうなるのか調べてみた。4月以降にプライムタイムに放送された地上波連ドラが対象。

 

まずは今期の平均視聴率上位3作。

1位 緊急取調室 13.97%

2位 小さな巨人 13.51%

3位 警視庁・捜査一課長 12.18%

見事に3作共刑事モノ。1位の緊急取調室は刑事モノという外さないジャンルに加え、天海祐希小日向文世大杉漣、でんでん、鈴木浩介など名プレイヤーが勢揃いしていたわけで、画面の安定感が違った。

 

続いてザ・テレビジョンがSNSで話題になっているドラマを独自に数値化した視聴熱。以下はザ・テレビジョンのTwitter公式アカウントで毎週発表されていたウィークリーランキングを元にした上位3作。

1位 貴族探偵

2位 リバース

3位 あなたのことはそれほど

このランキングはジャニーズタレントが出演した作品が有利になる傾向があるが、ジャニーズが出演せずともランクインした「あなそれ」はSNS映えする画ヂカラの強さが功を奏した。

 

続いてYahoo!みんなの感想で高評価だった作品。これは評価件数と点数が反比例する傾向にあるので、それぞれのランキングを別々に算出。

評価件数(6/29時点)

1位 あなたのことはそれほど 1293件

2位 貴族探偵 1281件

3位 母になる 1050件

点数(5点満点)

1位 ツバキ文具店 4.61点

2位 リバース 4.45点

3位 緊急取調室 4.38点

評価件数の多いあなそれと貴族探偵だが点数は2点台。良くも悪くも話題になった作品と言える。視聴率では1位の緊急取調室は点数も高いが評価件数は82件と驚くほど少ない。ネットユーザーと視聴者層が被っていないのだろう。

ちなみにツバキ文具店は325件、リバースは1022件。リバースは1000件越えでこの高評価はすごい。番組に対する信頼感が伺える。

 

続いて2ちゃんねるのスレッド数ランキング(6/29時点)。

1位 あなたのことはそれほど 28スレ

2位 リバース 21スレ

3位 小さな巨人 17スレ

3作共TBSだが、今期のTBSドラマはコメディーでないにも関わらず爆笑を誘う物ばかりだったのでこの結果は納得。

 

最後に録画率。TVガイドの公式サイトのデータを参照。以下はドラマが一気にスタートした4月第3週と終盤に差し掛かった6月第2週のランキング。

4月第3週

1位 CRISIS 公安機動捜査隊特捜班

2位 人は見た目が100パーセント

3位 リバース

6月第2週

1位 リバース

2位 あなたのことはそれほど

3位 ボク、運命の人です。

CRISISは当初2週連続首位だったが6月第2週では5位に甘んじている。確かにTwitter上でも当初の評判はCRISISとリバースの2TOPという印象だったが、前者はいつの間にかトーンダウン。一方リバースはCRISISの王座陥落以降ずっと1位を守り続けている。裏の金曜ロードショーをリアルタイムで観てこっちを録画する視聴者も多いのだろう。

視聴率は奮わなかった「ひとパー」も当初は意外と期待値が高かったことがわかる。

途中から順位を上げた「あなそれ」と「ボク運」は物語後半の盛り上がりが共通。話の内容の面白さがモロに影響を受けるランキングと言える。

 

こう見ていくと逆に視聴率のランキングが異質に見えてくるのが面白い。リバースとあなそれはそれ以外のランキング全てにランクイン。自分が今期最後まで観たドラマがこの2作品だったので、この結果は嬉しい。テレビ局からすれば視聴率が全てなのだろうが、いち視聴者としてはそれ以外の楽しみ方もしたいところ。

 

 

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意外に秀逸だった不倫ドラマ「あなたのことはそれほど」

「逃げ恥」「カルテット」という秀作を送り出してきたTBS火曜22時枠で4月から放送されてきた「あなたのことはそれほど」が先日最終回を迎えた。序盤は正直よくある不倫ドラマかなと思って流し見していたのだが、主人公・美都(波瑠)の不倫が夫の涼太(東出昌大)にバレた第4話から一気に面白くなり、最後まで見逃せないドラマとなった。

 

ちょうど同時期に同じく不倫ドラマの「昼顔」が放送されていたこともこのドラマとの比較となって面白くなっていた部分はある。昼顔は不倫カップルである上戸彩&斎藤工ペアと吉瀬美智子&北村一輝ペアを美しく描き、本来であれば被害者のはずの夫&妻は問題のある人物として描いて(上戸夫はセックスレス、斎藤妻は夫より格上、吉瀬夫はモラハラ)視聴者を不倫カップルに感情移入させようという狙いがあった。

 

しかし「あなそれ」は「不倫、ダメ、ゼッタイ」と言わんばかりに不倫している主人公を徹底的に頭カラッポの人格破綻者として描き、視聴者に敢えて感情移入させないという手法をとった。昼顔では8話で不倫がバレたのに対し、4話という物語の序盤で不倫をバラしたことから見ても、このドラマが不倫カップルの情事ではなく彼らへの制裁が主題であったことがわかる。

 

役者で言えば当初は「冬彦さんの再来」と言われるほどの怪演を見せていた東出昌大がこのドラマのメインかと思っていたが、もう一人の不倫被害者である仲里依紗の真綿で首を絞めるような演技は出色だった。以前「逃げる女」でも頭のおかしいギャルを熱演して強烈な印象を残していたが、もっとドラマで見たい女優。

また、物語の主軸には絡んでこないと思われた東出の同僚役の山崎育三郎と、仲のお隣さんで距離ナシ主婦役のしょこたんも好助演。いずれも最終回手前で感情を爆発させる演技が話題を呼んだ。山崎育三郎は「下町ロケット」以降出演作が途切れないが、これで更に見る機会が増えそう(次クールではついに主演)。

そして物語のメインのはずの不倫相手を演じた鈴木伸之がどんどん影が薄くなっていったのもこのドラマならでは。昼顔の斎藤工のように真面目だった青年が一時の過ちで...というわけではなく、元々チャラかった男が結婚してからも浮気癖が治りませんでしたというだけのことだから、妻に4発ビンタされようが、東出にストーキングされようが自業自得と言うしかない。

 

色気を全面に出すわけでもなく、コメディーに走るわけでもない、新しい不倫ドラマの形を見せてくれた「あなそれ」。今後もこのドラマ枠には注目していきたい。

 

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