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何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

生まれ変わったコントの大会 キングオブコント2015

今年のキングオブコントの視聴率は15%だったそうな。裏で放送していた日曜最強番組の「鉄腕DASH」「イッテQ」にも勝っているというのだから驚き。
 
ちなみに去年の視聴率は8%程度で、番組史上最低の数字だった。そこから2倍近く視聴率が跳ね上がるとは、ちょっと想像以上だった。しかも番組最高視聴率を更新とは。しかし各ファイナリストが披露したネタの面白さ、完成度の高さで言えば、個人的には圧倒的に去年の方が上だったと思う。
 
なぜ去年最低視聴率を記録してしまったのかと言えば、裏番組の影響に加え、あまりにも「お笑いファン」向けの内容にし過ぎたというのが大きな要因だと思う。去年のファイナリストのメンツが発表された時、「視聴率捨てたのか?」と思うほど無名ぞろいで、驚くと同時に感心したことを覚えている。民放ゴールデンの番組でこんな無名の芸人10組のネタを放送するなんて、キングオブコント男前じゃないか、と。しかもその芸人達の披露したネタというのが、観る側のお笑いリテラシーを試される高度なものばかりで、それを審査するのがまた準決勝敗退した芸人達100人。完全に「芸人の芸人による芸人のための番組」になっていて、これはついていけなかった視聴者も多かったと思う。そして劇場に足を運んだりDVDを買ったりするレベルのお笑いファンはこういう番組が大好物なのだ。
 
しかしお笑いファンがいくら喜んだところで視聴率がついてこなければ番組存続の危機となる。そんな状況の中キングオブコントが今年下した決断というのが「準決勝敗退芸人100人による匿名審査の廃止」と「松本人志、さまぁ~ず、バナナマンという面々の審査員投入」。今までキングオブコントキングオブコントたらしめていたのは芸人100人による審査で、他のお笑い賞レースとの差別化に加え司会のダウンタウンと芸人達のひな壇トーク的やり取りは楽しみのひとつだった。そういった部分が無くなるのは寂しかったが、視聴率を獲るためには止む無し、と自分は受け止めていた。実際今年は高視聴率を獲得したのだから運営側の判断は間違ってなかったと言える。しかしそれとは別に、番組の内容は個人的に満足できるものではなかった。
 
最も気になったのが観客の笑い声の少なさ。前説が無かったとか審査員席が近くて緊張してたとかマイクが拾えてなかったとか色々原因はあるみたいだが、来年は改善して欲しい。去年までは会場に芸人が100人いたので、その笑い声が「ココこのネタの笑いどころですよ」というのを暗に視聴者に伝える役割を果たしていたが、今年はそれが無かったので、ほとんどの芸人がうっすらスベッた感じになってしまって気の毒だった。そんな中で2本とも完璧にウケたコロコロチキチキペッパーズの優勝は至極当然と言える。改善策としては、また芸人100人を会場に呼び戻すのが一番良いと思うのだが。
 
前置きが長くなったがここからは今年のネタについて。去年までの審査傾向は、同年代の芸人が審査していたため「この発想は無かった」「これは自分たちには出来ない」と思わせるネタが有利だったが、今年は百戦錬磨の5人の芸人達が審査員ともあって「細けぇこたぁいいから笑わせろ」という空気を感じた。その結果シンプルで笑いどころが明確なネタが評価され、前フリが長かったり笑いどころの少ないネタは評価されない傾向にあった。
 
藤崎マーケットの1本目のネタは今大会一番好きだった。多くの芸人が過去大会の審査傾向と今大会の審査傾向のギャップに苦しむ中、このネタはどちらの審査傾向でも高得点を狙える唯一のネタだったように思う。全身青の路上パフォーマーのもとに父親がやってくるという設定だが、シュールでいて楽しくて切なくて仄かに不気味という色んな感情を揺さぶられるコントだった。パフォーマーを演じるトキのパントマイムのキレや、BGMにDEENの「ひとりじゃない」をチョイスするセンスなど、セリフ以外の部分でも面白さを形成していた。トップバッターだったのが悔やまれる。2本目はお化け屋敷のゾンビ役の人を生き別れた息子が訪ねてくるという1本目と似た系統のネタ。「1本目と似てる」とわかった時点で期待値が下がってしまった気がする。異色とも言える1本目の後だと普通のコントに見えてしまった。
 
ジャングルポケットはトリオでよくあるツッコミ・大ボケ・小ボケの決まりが無く、役割が流動的なところが強み。1本目は斎藤・太田がボケでおたけがツッコミだったが、2本目は斎藤ツッコミ、太田大ボケ、おたけ小ボケだった。トリオでこれをやってのけるのはなかなか凄い。内容的には1本目の浮気ネタの方がトリオの強みを生かしていた。本筋と関係無い「なんか、腹減らね?(笑)」に笑った。審査員からも割と高評価だったが、斎藤の力み過ぎが発動し、100%良い出来とは言えなかった。まだまだ伸びしろはあると思う。
 
毎年優勝候補と言われながら年々優勝から遠ざかっているさらば青春の光。今年で連続4度目の決勝だったが、ついに最下位に終わってしまった。従来のさらばのコントは東口の言動に振り回される森田の被害者ヅラを楽しむ形式だったが、今回のコントは一度も絵を描いたことのない自称芸術家の森田に東口がツッコむという形式。しかしツカミを失敗してそのまま最後までズルズル行ってしまった。また森田が病的に叫び続けるキャラ設定だったのも会場との温度差に拍車をかけていた。東口のツッコミも森田の熱演に負けてしまっており、役割が逆だったら...と思わず考えてしまった。着眼点は相変わらず面白いし、ゴッホの絵に感化されて絵を書き始めるも結局1枚も書き上げてない森田に対する「ゴッホの絵見ただけの人」という形容の仕方はさすがのセンス。ただ、3年前「イタトン」に衝撃を受けた身からすると色々と物足りなかった。
 
コロコロチキチキペッパーズダークホースながら会場の空気にバッチリハマったコントで優勝を勝ち取った。一度見たら忘れられないナダルの顔と声はこのコンビの大きな武器。だからと言ってそればかりに頼るのでは無く、相方の西野をボケとして、それに対するナダルのリアクションをクローズアップするという形で笑いを獲っていた。自分たちの魅力をよくわかっている印象。1本目はネタ自体のシンプルな面白さに対しナダルの濃いキャラクターが良い塩梅で乗っかっていた。2本目の当てブリネタでは完全にナダルが会場に受け入れられており、ひたすら平和な時間が流れていた。芸歴4年目での優勝は高齢化が進む若手芸人界にとっては驚異的な出来事だろう。番組的には第2のバイきんぐ小峠を探していたはずで、ナダルがそこに納まるのか否か。あとどうやら西野がネタやナダルのキャラクターを考えているらしいが、人畜無害に見えて意外と策士だ。
 
うしろシティさらば青春の光と同じく決勝常連だが、今年はさらばと同じ状態に陥っていた。うしろシティが今まで優勝できなかったのは綺麗にまとまり過ぎて爆発力の無いネタが原因だったと思う。アイドル的人気もあるのでそれに対する芸人審査員の嫉妬も多少あったかもしれない。それを気にしてか今回は二人とも顔がはっきり見えない悪魔と老人に扮し非日常なコントを演じて見せた。しかし審査形態が変わった今回に関しては、従来通りの学生コントなどをやった方が普通に高得点を狙えた気がしてならない。松本も指摘していたが、コントの導入時点では面白くなりそうだったのに(ゲートボールのくだりとか)、結局大して話が広がらずいつの間にか終わっていたという印象。
 
バンビーノは結果的に準優勝だったが、コロチキ同様湿っぽさの無いひたすら楽しいことを追求したスタイルが受け入れられたのかなと。バンビーノって同じリズムネタ仲間の2700と比較されることがあるけど、2700よりもカオスさが薄くてわかりやすいなと思う。1本目は魔法使いと犬のやりとりがひたすら微笑ましいが、去年の「ダンソン」と比べると小さくまとまって見えてしまう。しかし2本目のマッサージネタは「こういうネタを待ってた!」というくらいリズムに特化した完成度の高いコントだった。別番組で見たバージョンが完璧だったため今回は100%の出来では無かったが、去年のリベンジは果たしたと思う。
 
ザ・ギースは自分たちのシュールなコントスタイルそのものをネタにした自虐的かつ実験的なコント。所謂「メタネタ」だが、漫才であれば2010年M-1のジャルジャル、2012年THE MANZAIアルコ&ピースなどが漫才自体をネタにしたメタネタを披露して賛否両論を巻き起こしたが、コント自体をネタにしたコントというのはこういう賞レースでは初めて見た。ザ・ギースが今回披露したのは、前半にシュールを通り越してイカレたコントを見せておいて、リフォーム番組「劇的ビフォーアフター」のフォーマットに則って見やすく改善されたコントを見せるというもの。アイディアは凄いし、面白くもあったのだが、ザ・ギースが普段どんなネタをやっているかを見る側が知っているという前提のコントで、準決勝で爆発している画は容易に浮かぶ。しかし視聴者や会場にいる観客及び審査員には必ずしもその共通認識は無いため、当然狙った通りの笑いにはならない。それにしても前半のカオス感は半端無かった。
 
ロッチは1本目の試着室ネタで爆発。「くだらねぇ」という形容がピッタリの全く中身の無いコントだった。中岡のポーズや声のトーンがツボにハマってしまうと永遠と笑ってしまうある意味最強のネタ。ただこういうネタはジャルジャルがよくやっているイメージで、彼らが決勝に上がっていたらどうなっていたんだろうという感想がよぎった。よっぽどのことが無い限りロッチ優勝だろうと思っていたが、2本目見事に失速。ある意味こちらもロッチらしいユルいネタだったが、1本目との幅を見せたかったのかコカドメインで中岡を全く生かさなかったのが一番の敗因。1本目からの良い流れを自ら断ち切ってしまった。
 
アキナは去年同様人間の黒い部分を引き出すことに重きを置いたコントだったが、「これ鳥を飼ってる人が見たらどう思うんだろう」という思いがネタ中どうしても頭をよぎってしまう。また、去年も今年もフリにたっぷり時間を割いていたが、去年はフリの時点で笑いが起きていたのに対し、今年は前半ほぼ無風だったのは勿体無かった。あれだけ長いフリならば後半によっぽど意外な展開が無ければ割に合わない。世の人がうっすら感じているが大きな声で言えない「鳥」に対する違和感をネタにした勇気は買いたい。
 
巨匠は去年の「パチンコ玉を新聞紙で包んでおじさんを作る」といい、今年の「回転寿司屋でコンクリート固めにされた罪人」といい設定のオリジナリティがエグい。そして放送コードギリギリ。しかし設定のインパクトがピークになっている感は否めない。相方が受けのリアクションのみという点も減点対象だったかもしれない。個人的には暗い店内での「タコだと思ったらイカだった」というセリフのディテールなどは良かった。松本人志の「昔の僕だったら好きだった」というコメントには色々考えさせられた芸人も多いと思う。
 
今回からの審査員制度によって審査基準や求められる笑いは去年とは全く別物になった。コロコロチキチキペッパーズという新鋭の優勝がそれを物語っている。従来のキングオブコントを好んでいた視聴者からは戸惑いや失望の意見も見られる。しかし今回からキングオブコントが生まれ変わり、より大衆に向けた大会になっていくであろうことは今回の高視聴率で決定的になった。大会をテレビで放送する以上はそうなって然るべきだと思う。とりあえず今は来年大会を楽しみに待つ。