何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

M-1グランプリ2015

2010年に一旦幕を閉じたM-1グランプリが今年5年振りに復活。5年前と違うのは①芸歴制限がコンビ結成10年から15年に変更②審査員が歴代のM-1王者ということ。審査員に関しては歴代全ての優勝コンビ(の片方)が揃っているように見えるが、実はアンタッチャブルだけ両方とも参加していない。諸々の事情で2人揃ってテレビ出演することもめっきり無くなったコンビなので仕方ないと言えばそうなのだが、一抹の寂しさを覚える。

以下各ネタ感想。
 
アニメ「スペースコブラ」を意識したという金髪&上下赤の衣装が鮮烈なカズレーザーと、ドラマでナンシー関を演じ「生き写し」と絶賛された安藤なつによる男女コンビ。ちなみにカズレーザーはさらば青春の光東口と大学時代にコンビを組んでいた経歴がある。一見するとどちらがボケかわからない程見た目のインパクトが強い2人だが、どっしりしたツッコミの安藤と軽いノリで予測不能のボケをするカズレーザーという役割。内容は見た目ほど変化球ではないものの、ブラック過ぎずベタ過ぎないちょうどいい塩梅のネタだったと思う。それでもカズレーザーの「やべー奴」感はそこはかとなく感じ取れた。ボケの発想には非凡さを感じるが、技術・構成の面であまり点数が稼げなかった模様。でも2本目も見たいと思った。
 
馬鹿よ貴方は
去年のTHE MANZAIで注目された異様な存在感のコンビ。ファラオの突拍子も無い不気味なボケを受け入れられるかが全てなので、会場の受け入れ体制が整って無いと厳しい戦いになると思ったが、THE MANZAIの時よりは善戦していた。特に後半の「大丈夫」連呼ゾーンでは観客(と上戸彩)を惹き込んでいた。暫定席で敗退が決まった時の「やっとM-1らしくなってきましたね」はベストコメント賞。
 
のび太風の田中とジャイアン風の武智による好対照なコンビ。と言っても2人の関係性を駆使したしゃべくり漫才ではなく、田中がコントに入り武智が第3者目線でツッコむという形式。前半の伏線を終盤で一気に回収する構成の上手さが目立った。しかし以前THE MANZAIに出た時と同様に大会を通してのインパクトは今ひとつに終わってしまった。あと審査員のパンクブーブー佐藤がコメントしていたように、今回のファイナリストのネタは心の闇が反映された物が多く、それが今のトレンドとは言えこう立て続けに見せられると食傷気味になってしまう部分もある。これは近年のキングオブコントにも言えることで、この流れが今後も続いていくのか断ち切られるのか気になるところ。
 
和牛
世間的には当たり前とされている風潮にボケの水田が難癖をつけていくスタイルで、観ている側がどんどんダメージを受けていく。ツッコミの川西の受け身の芝居も上手い。ただ「結婚式を抜け出す花嫁」というシチュエーションはドラマでは"あるある"でも実際にはまず起こり得ないので、NHK新人お笑い大賞でやった「キッチンでのカップルのやりとり」の方が共感しやすさという点で面白かったように思う。
 
ジャルジャル(初戦1位通過・最終順位3位)
5年前のM-1で漫才の概念をぶち破るようなネタをして物議を醸したコンビ。今回も多少のメタ要素はありつつも、5年前よりはずっと正統派のしゃべくり漫才に寄せていた。とはいえ、審査員の中川家礼二があまり評価してなかったり、Twitter上でも評価が真っ二つに分かれているのを見ると、これだけ賛否両論なネタを作れることに逆に感心する。ネタの内容はコント師らしいある法則に沿って展開するシステム型。しかし礼二が指摘したようにシステムを見せたい感が前面に出過ぎたかもしれない。ここは本当に観る人によって好みが分かれる。
 
銀シャリ(初戦3位通過・最終順位2位)
昭和風の出で立ちでとにかく橋本のツッコミの上手さが際立つコンビ。同タイプの学天即と比べると銀シャリの方がツッコミの主張が抑えめでボケを食い過ぎていない。このコンビはボケの鰻の天然ぶりも味となっているので、冒頭の「ベルリンの!?」で掴んだのは良かった。言い回しの面白さは文句無いのだが、パンブー佐藤の指摘にもあったように題材の平凡さ・漫才の教科書通り感がちょっと勿体無い。もっとこの2人ならではの漫才ができると思う。
 
ハライチ
鉄板のノリボケ漫才を封印して挑んだというだけでもこの大会に対する本気が感じられる。ただいつもと違い岩井のサイコな世界観が前面に出るネタだった分、その世界観を受け入れるまでに時間がかかってしまい澤部のツッコミで笑う体制にならなかった。終盤の贅沢あるある的なくだりでやっと乗ってきたと思ったが、時すでに遅し。岩井が終始噛み気味なのも良くなかった。
 
2005年のM-1以来10年ぶりの決勝。爆笑オンエアバトルでよく観ていたこともあり、当時はこのコンビが好きで応援していた。しかしその時披露したネタはこのコンビの中でも上出来のネタとは言えず、それ以来勢いが落ちてしまった印象がある。今回も当時と同様ボケの関のデブ押しのネタだったが、当時より完全に空気を掴んでいた。会場のウケ量の割に点数が伸びなかったのは、2人のやり取りより言い換えの面白さで笑いを取っていたこと、後半どんどんコントっぽくなっていったこと、途中で2人の役割が入れ替わったことなどが減点対象だったんじゃないかと勝手な推測をしてみたが、一番低得点をつけたチュートリアル徳井のコメントをとりあえず聞きたかった。
 
トレンディエンジェル(敗者復活枠・初戦2位通過・優勝)
このコンビがストレートで決勝行きしなかったと聞いた時点で敗者復活からの優勝もあり得ると思っていたが、やっぱりその通りになった。どんな場面でも笑わせる力があり、加えて時事ネタを積極的に取り入れる貪欲さもある。よくあれだけハゲネタのバリエーションが思いつくなと感心する。こういう軽い芸風のコンビが優勝するのは納得しない人もいそうだが、今回の中で一番自分たちのスタイルを確立していたという意味で個人的に文句無く優勝だった。
 
ネタ以外の部分ではやはり歴代チャンピオンの審査が一番の注目どころだったが、中川家礼二ますだおかだ増田の貫録が凄く、過去の審査員の中に混じっても違和感無いのではと思うほどだった。しかし一番良かったのは全コンビのネタがよくウケたこと。去年のTHE MANZAI、今年のキングオブコントと「なぜここで笑いが起きない?」という場面を何度も観てきたので、それが懸念材料だった。今後もこんな感じでお願いしたい。