何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

意外に秀逸だった不倫ドラマ「あなたのことはそれほど」

「逃げ恥」「カルテット」という秀作を送り出してきたTBS火曜22時枠で4月から放送されてきた「あなたのことはそれほど」が先日最終回を迎えた。序盤は正直よくある不倫ドラマかなと思って流し見していたのだが、主人公・美都(波瑠)の不倫が夫の涼太(東出昌大)にバレた第4話から一気に面白くなり、最後まで見逃せないドラマとなった。

 

ちょうど同時期に同じく不倫ドラマの「昼顔」が放送されていたこともこのドラマとの比較となって面白くなっていた部分はある。昼顔は不倫カップルである上戸彩&斎藤工ペアと吉瀬美智子&北村一輝ペアを美しく描き、本来であれば被害者のはずの夫&妻は問題のある人物として描いて(上戸夫はセックスレス、斎藤妻は夫より格上、吉瀬夫はモラハラ)視聴者を不倫カップルに感情移入させようという狙いがあった。

 

しかし「あなそれ」は「不倫、ダメ、ゼッタイ」と言わんばかりに不倫している主人公を徹底的に頭カラッポの人格破綻者として描き、視聴者に敢えて感情移入させないという手法をとった。昼顔では8話で不倫がバレたのに対し、4話という物語の序盤で不倫をバラしたことから見ても、このドラマが不倫カップルの情事ではなく彼らへの制裁が主題であったことがわかる。

 

役者で言えば当初は「冬彦さんの再来」と言われるほどの怪演を見せていた東出昌大がこのドラマのメインかと思っていたが、もう一人の不倫被害者である仲里依紗の真綿で首を絞めるような演技は出色だった。以前「逃げる女」でも頭のおかしいギャルを熱演して強烈な印象を残していたが、もっとドラマで見たい女優。

また、物語の主軸には絡んでこないと思われた東出の同僚役の山崎育三郎と、仲のお隣さんで距離ナシ主婦役のしょこたんも好助演。いずれも最終回手前で感情を爆発させる演技が話題を呼んだ。山崎育三郎は「下町ロケット」以降出演作が途切れないが、これで更に見る機会が増えそう(次クールではついに主演)。

そして物語のメインのはずの不倫相手を演じた鈴木伸之がどんどん影が薄くなっていったのもこのドラマならでは。昼顔の斎藤工のように真面目だった青年が一時の過ちで...というわけではなく、元々チャラかった男が結婚してからも浮気癖が治りませんでしたというだけのことだから、妻に4発ビンタされようが、東出にストーキングされようが自業自得と言うしかない。

 

色気を全面に出すわけでもなく、コメディーに走るわけでもない、新しい不倫ドラマの形を見せてくれた「あなそれ」。今後もこのドラマ枠には注目していきたい。

 

あなたのことはそれほど DVD-BOX

あなたのことはそれほど DVD-BOX