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テレビ番組の感想を綴るブログ

キングオブコント2017 感想

今年のキングオブコント、率直に言って凄い面白かった。少なくとも審査方法が変わってからの3年間の中では一番。そして今年ほどネタ順の重要性を感じた年は無かった。

 

このコールセンターのネタ、2014年のキングオブコントDVDに収録されている準決勝で既に見たのだが、正直そっちの方が自分は好みだった。あの保留中の変な歌をテレビでも聴きたかった。世間的には無名に近いコンビだが、今回のメンツの中だとまだ知名度ある方というのが今年のファイナリストのヤバさを物語っている。このコンビに関してはネタよりもその後のトークの方が印象に残った視聴者も多いのでは。ボケのふぢわらのまるで10年前からテレビに出続けているかのようなボケの放り込みぶりは、人によっては生意気に取られるだろうが、個人的には初期のインパルス板倉を思い出すので好き。今後テレビ出演が増えて欲しい。

 

設楽が「アメリカのコメディーみたい」と評していたように、ただただ目の前で起きていることが面白いというタイプのコント。もちろんお笑いなのでそれで全く問題無いのだが、キングオブコントを長いこと見続けていると、何かしらの狂気だとか見る側の想像力を掻き立てる余白だとかを欲してしまう。このトリオはもうENGEIグランドスラムに毎回出て良いと思う。

 

昨年大会と同様、山内の狂気が光るネタとワードセンスが光るネタの2種類で揃えてきた。本当に地肩が強いコンビだと思う。1本目は準決勝でも爆発したと聞いていたので評判通り爆笑した。2本目は昨年の「首が落ちるマジック」でも披露された山内のツッコミフレーズの面白さが炸裂。「先が無いやろ!」「目処が立ってんねん!」。正直2本目は、圧倒的な設定の強さを見せたさらばの直後だったので「ウエットスーツを脱がせる」という設定では弱過ぎるはずなのに、これだけ爆笑をもぎ取ることができるのは天晴れとしか言えない。優勝おめでとう。

 

 1本目はビジュアル的なキモさ、2本目は内面的なキモさを打ち出すことで幅を見せてきた。特に2本目の「ストーカー」は台本も田中の怪演も素晴らしく、個人的に一番好きなコントだったかもしれない。他の芸人が演じたらホラーコントになりそうなところを、2人の愛嬌でポップに仕上げており、このコンビが演じる意義を感じた。

 

卒業式でモテない男のコント。ただでさえキモキャラの権化みたいなアンガールズの直後な上、その前にかまいたちもイケてない男ネタをやってしまっていたので、ここもとにかく順番が悪かった。そこまでブ男でもないしね。このコンビのネタは初めて見たのだが、てっきり女性の山田さんのキャラを生かしたネタかと思いきや、終始普通の女子の役だったのが物足りなかった。「女5人集めろ!」の部分は準決勝では爆発してたんだろうなぁと思った。

 

自分が歴代キングオブコントで一番好きなネタが、2012年にさらばが披露した「イタトン」なのだが、今回の1本目「居酒屋」はその頃のさらばを彷彿とさせる原点回帰的なネタで個人的に嬉しかった。しかし三村の審査評「声に出して笑わなかった俺がいた」というのもわかる。さらばのネタって笑うより先に「よくそんなネタ思いついてよくその展開のさせ方できるな」と感心させられる物が多いので。2本目の「パワースポット」は他の番組でも見たが、やっぱり設定が抜群。このコンビは森田がツッコんでこそと思っていたが、このネタを見てからはその考えを改めさせられた。

 

今年のキングオブコントはこのコンビがブレイクして初めて完結すると思う。それくらいこの番組のスタッフの「にゃんこスターを売れさせたい!」という気概を感じた。元々はピン芸人同士だった二人が5ヶ月前にコンビを結成。それが決勝に来ているだけでも凄いが、松本人志が97点をつけた時はひっくり返った。コント界のルールと言えば「世界観を壊さない」というのが一番にあると思うのだが、彼らが披露したネタは「なんてハートフルなネタなんでしょう」というメタ視点といい最後のコンビ名紹介といい、悉く掟破りであった。その癖してツッコミの間やワードチョイスは完璧なあたりがまた憎たらしい。

さらばはこれの前の出番で本当に良かったねぇ...w

 

  • アキナ(7位)

煽りVの中で「自由な設定のコントを」的なことを言っていて、実際これまでのアキナのネタとは一味違ったネタではあったんだけど、いかんせんにゃんこスターの後では...。2014年の「取れへん」を見た時からアキナのネタはシュールな4コマ漫画のような味わいがあると思っていて、今回のネタはショートコント形式になってる分余計その印象が強くなったんだけど、この大会で勝つにはもっと爆発力が無いと難しいんだろうな。

 

数年前から準決勝では一番評判が良く、毎年決勝確実と言われながら涙を飲んできたトリオ。それまでの経緯を知っている者たちの間では今回の決勝進出で最も優勝の期待を集めていたが、まさかの最下位という結果に。では今回のネタが優勝に相応しかったかと言えば違うと思う。1回目にネタを見た時に思ったのは「え?めちゃめちゃコントメイクしてる?」ということ。今回のファイナリストのネタを振り返ると、がっつりメイクのコントを披露したのはこのトリオだけ。番組を通して見るとここだけ時間が10年くらい前で止まってしまっているような印象を受けた。コントの内容もなんだか色々詰め込み過ぎていて、間も詰まっているし、少し見辛かった。1本目は過去の代表作で良かったのになぁ。残念ではあるが、来年はテレビで爆笑をとっているGAGを見たい。

 

「母親をメシ呼ばわりする息子」というなかなか風刺の効いた設定で味わいがあったが、ここまで散々色んなコントを見てきた上でこのコンビが他より突出した部分があるかと言うと難しい。しかしメシに取り憑かれた少年の狂気を表現できるだけの演技力は今大会随一と言っていいと思う。

 

にゃんこスター後の3組は気の毒としか言いようがないが、優勝者、準優勝者は非常に良いところに収まったように思う。にゃんこスターはめちゃめちゃ流行って欲しいし、かまいたちは千鳥のようにじわじわと東京で浸透して欲しい。

 

 

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さくらんぼ(Original)

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