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テレビ番組の感想を綴るブログ

「半分、青い。」総括

朝ドラ「半分、青い。」が先日放送終了。放送前はタイトルに対して「君の名は。かよ(苦笑)」と言われたり、脚本家の北川悦吏子氏がTwitterでネタ募集をする様子が物議を醸したり、次期朝ドラ「まんぷく」「なつぞら」のキャストが発表され影が薄くなったり、自分の知る限り「半分、青い。楽しみ〜〜!」と言ってる人は見かけなかった気がする。

 

ちなみに自分は最近の朝ドラは「この設定、このキャストで行けば安全!」みたいな視聴者に対する忖度を感じてしまってしばらく離れていた。でも「半分、青い。」は久々の現代劇だし、キャストも好みだし、北川さんの作品も「素顔のままで」「愛していると言ってくれ」「ロングバケーション」「ビューティフルライフ」「オレンジデイズ」「空から降る一億の星」と観たことある物ばかりでTwitterで色々言われるほど悪い印象は無かったのでとりあえず観てみることにした。と言っても国営放送の顔の朝ドラ枠と90年代民放ドラマど真ん中の北川作品という組み合わせは水と油では?という懸念もあり、とにかく観る前は全くの未知数だった。そして全話見終わった感想は「とんでもないところまで連れて来られたな」。

 

放送前のインタビューで北川さんは以下のように語っている。

北川悦吏子:朝ドラ“ヒットの法則”「全部、外した」 「半分、青い。」は「集大成」 - MANTANWEB(まんたんウェブ)朝ドラには過去作の傾向から、いくつかのヒットの法則が存在するといわれている。最初に今作の企画が立ち上がった段階で、北川さんがNHK側から聞かされていたのは「実在する女性をモチーフに描くこと」や「時代と戦うこと」などで、「これがあれば大丈夫というのを、それを全部外して今、書いているので、そういう意味でもチャレンジング。だからこそ面白いものが生まれるんじゃないかなって思っています」と逆説的な自信を見せる。

 

確かにこのドラマは朝ドラでは定番と言われることを悉く覆して来た。まずタイトルが「半分、青い。」句読点である。そして初回ではヒロインが胎児(CG)で登場。大抵一週間で終わる子供時代が二週間。上京後に天職かと思われた漫画家を物語前半で引退。ヒロインの相手役が別の女性と結婚。それに伴ってヒロインも別の男性と結婚。嫁いびりが無い。しかし離婚。地元に帰るがすぐに東京にUターン。物語のまとめであるはずの最終週で次々に色んな問題が噴出。相手役と結婚したのか?開発した扇風機は売れたのか?どちらも謎のまま。

 

これだけ定番を外せば従来の朝ドラ視聴者からの反発は必至。しかし意外にも世間にはこれを受け入れた層もたくさんいたようで視聴率は高値安定。自分もその中に入るのだけど、やっぱり朝ドラでこんな内容許せない!という層もいて、感想ツイートを見ると「同じタイトルのドラマが2つ放送されていたのか?」と思うほど肯定派否定派のギャップが激しかった。

 

最も評価の分かれたポイントがヒロインである鈴愛の性格。と言うかこのドラマは鈴愛のキャラクターを受け入れられるかどうかに全てがかかっていると言っても過言ではない。自分も確かに鈴愛が秋風先生の原稿を人質に取ったり秋風先生の土下座を写ルンですしたりしたシーンでは「す、すずめちゃん...?」となったのだけど、あれはブラックな上司に対して泣き寝入りせずに立ち向かっているのだという考察を見て、このドラマの見方がわかった。確かにあの行動に出なかったら鈴愛は漫画家になれなかった可能性が高い。

半分、青い。」プロデューサーの勝田夏子氏はこう語る。

『半分、青い。』はトレンディドラマ? プロデューサーが語る北川悦吏子脚本“昭和平成史”への期待 | ORICON NEWS「朝ドラのヒロインには奥ゆかしさが求められますが、鈴愛はまったく奥ゆかしくありません。でも、思っていることをハッキリ言ったり、これだと思ったことに邁進するバイタリティは、とかく縮こまりがちな今の日本人に必要ではないかと思うんです。躾の悪い子とか、わがままな子と言う方もいらっしゃいますが、もう少し皆わがままになってもいいんじゃないですかという思いも含めて、描いている面があります」

思えば「ビューティフルライフ」「オレンジデイズ」も鈴愛と同様障がいを持つ女性がヒロインだったけど、2人共かなり勝気で、恋人である主人公としょっちゅう喧嘩していた印象があるので、北川作品の共通観念なのかもしれない。そして鈴愛に怒り狂う人達を見ていて逆になぜ自分はこのヒロインを受け入れられるのだろうと考えた結果、自分が他人に怒れるほど大層な人間じゃないからだとわかった。

 

そもそも鈴愛と自分は世代こそ違えど共通点は多い。子供の頃から絵を描くのが好きで高校では美術部。子離れ出来ない母と漫画好きで飄々とした父を持つ。一時期は漫画家の夢があったが現在は全く絵を描いていない。割と色んな職種に就いている。自己評価が低い、など。鈴愛のように思ったことを口に出すタイプではないけど、だからこそ鈴愛を羨ましいと感じることも多かった。たぶん自分はこのドラマがターゲットに想定した層に入っている。だから観ていて居心地が良いし楽しめている。

 

そしてこのドラマは鈴愛以外にもダメな人達がたくさん出て来る。幼馴染みに未練があるのに結婚して妻に「ずっと寂しかった」と言わせる男、犬を飼うかの如く女の子が増えちゃう男、夢のために妻子を捨てる男、弟子の出世チャンスを奪った上に自殺失敗して泣く映画監督、仕事を抜け出して失楽園に勤しむ百均店長、会社倒産して夜逃げする男...って男ばっかじゃねえか!思えば女性キャラでダメ人間なのって鈴愛と3オバくらいじゃないか?だから上手くやってけたのか(書いてて気付いた)。まあとにかく色んなタイプのダメ人間が集まっているのだけど、こういった人達に「非常識だ!」と思うか「わからんでもない」と思うかでこのドラマへの評価も変わってくるのかなと。

 

ダメ人間に限らずこのドラマはマイノリティーに寄り添う物語である。鈴愛は幼少期に左耳を失聴するが、それを乗り越えて健気に頑張る感動物語にはせず、「この世は両耳聞こえる人用にできとる。私のためにはできとらん。仕方ない。聞こえんでも聞こえとるふりして生きる。臨機応変や」と諦めとも達観とも取れる台詞を言わせる。ゲイのボクテは言葉の端々から外部から差別を受けていることが感じ取れるが、本編では仲間と楽しくやっている。そこに届く母からの「ゲイとやらも漫画とやらもやめて帰って来なさい」という手紙。この一文だけでボクテの苦悩や90年代当時のLGBTに対する世間の認識がわかる。教師から酷い言葉を吐かれ苦痛で学校から電話して来た息子に津曲は「そのまま帰りなさい」と言う。学校でいじめられ登校拒否になった娘に鈴愛は転校を促し「あなたは逃げるのではない。正しい場所に行くんです。そしてする必要のない戦いだ。だから場所を変える」と言う。これらのエピソードはどれも別のメインの話が進行している時にさりげなく挿入される。こうした描き方を「軽んじている」と感じる人もいるだろうけど、自分はこういう描き方だからこそ誰にでも起こり得る、日常に潜んでいる物として説得力が出ると思う。

 

北川さん自身が何度も大病をしてきて今も闘病中であるからこそ人の弱さに寄り添えるし、それを作品に落とし込める。半分の人達には理解されないかもしれないけど、もう半分の人達には届くはず。ドラマタイトルにはそういう意味も込められている気がする。

 

ドラマの根底にあるテーマはこんな感じかな。一見アグレッシブだけど実は優しさに溢れたドラマだった。平成の最後にこういうドラマが観れて良かった。

あの台詞が良かった!この人の演技が良かった!とか他にも言いたいことはたくさんあるので、最後に登場人物の皆さんに向けてメッセージを送ります。

 

 

鈴愛ちゃん(永野芽郁 様)

漫画の仕事がどん詰まりになって律くんが結婚して「私には何も無い!」と叫ぶシーンはこのドラマで一番泣きました。あと「わたしのかんがえたさいきょうのごうもんきぐ」の説明をこばやんにする時のオタク喋りも好きでした。

 

律くん(佐藤健 様)

いや何年かかってんねん!神様のメモかよ!そういうとこだぞ!お幸せに!

 

晴さん(松雪泰子 様)

鈴愛が破門されて帰って来てまた戻る時の「宝くじに当たったみたいやった」という台詞が好きでした。晴さんは歴代の朝ドラのお母さんで一番リアルだったと思います。

 

うーちゃん(滝藤賢一 様)

カンちゃんに一瞬に咲けを音読してあげるシーンが好きでした。イケボでしたね!

 

仙吉さん(中村雅俊 様)

戦争の話題からの真夏の果実は斬新過ぎてびっくりしました。草太結婚騒動の時の狼狽ぶりも可愛かったです!

 

弥一さん(谷原章介 様)

鈴愛ちゃんが初めて描いた漫画を見せに来た時の「これ最初に読むのは律なんやないの?」ともっともらしく言うシーンが好きでした!

 

和子さん(原田知世 様)

金八先生のモノマネお上手でした!岐阜犬を通して律くんと会話するシーンは名シーンですね...。

 

菜生ちゃん(奈緒 様)

現存する女子で一番ポニーテールが似合うと思います!鈴愛ちゃんの結婚お祝いコメント素敵でした!

 

ブッチャー(矢本悠馬 様)

夏虫駅の回は何気に菜生ちゃんと車内待機するブッチャーが好助演でした!個人的にあのブッチャーが一番イケメンです!

 

秋風先生(豊川悦司 様)

存在が最高でした!こんなに役と中の人の境目がわからないキャラクターはいないです!

 

菱本ちゃん(井川遥 様)

うーちゃんに電話で捲し立てるシーンではふえぇ...となりましたがめちゃ良い人でしたね!ピンクハウスお似合いでした!

 

ボクテ(志尊淳 様)

鈴愛ちゃんの神様のメモをパクって破門される一連の流れとても好きでした!彼氏とお幸せに!

 

ユーコ(清野菜名 様)

本当に自分の身内が亡くなったような気持ちになりました。鈴愛ちゃんの友達になってくれてありがとう。ずっと秋風塾だよっ!

 

マアくん(中村倫也 様)

子猫を肩に乗せて登場する人間を実写で見るとは思いませんでした。ウェイター姿が眼福でしたね!

 

涼ちゃん(間宮祥太朗 様)

6つぐらい人格あるのかな?ってぐらい情緒がおかしかったけどカンちゃんといると良きパパ感出るから子供パワー最強ですね!

 

元住吉監督(斎藤工 様)

佐野弓子先生と2人のシーンヤバかったですね...。涼ちゃんと2人して養いたい感凄かったです!

 

光江さん麦さんめありさん(キムラ緑子 様・麻生祐未 様・須藤理彩 様)

もっと見ていたいと思った頃に退場しちゃって残念。涼ちゃんが出て行った後の刑事コント無駄に演技上手くて最高でした!

 

カンちゃん(山崎莉里那 様)

可愛過ぎか!にゃんこスターのモノマネ上手だったよ!

 

津曲さん(有田哲平 様)

修次郎への電話対応神でしたね!扇風機のアイデア盗もうとしたのはアカンけどな!ホセ・メンドーサの顔真似お上手でした!

 

恵子さん(小西真奈美 様)

「兄」の発音が「アニー」なのが良かったです!その髪地毛なんですか?