何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

M-1グランプリ2015

2010年に一旦幕を閉じたM-1グランプリが今年5年振りに復活。5年前と違うのは①芸歴制限がコンビ結成10年から15年に変更②審査員が歴代のM-1王者ということ。審査員に関しては歴代全ての優勝コンビ(の片方)が揃っているように見えるが、実はアンタッチャブルだけ両方とも参加していない。諸々の事情で2人揃ってテレビ出演することもめっきり無くなったコンビなので仕方ないと言えばそうなのだが、一抹の寂しさを覚える。

以下各ネタ感想。
 
アニメ「スペースコブラ」を意識したという金髪&上下赤の衣装が鮮烈なカズレーザーと、ドラマでナンシー関を演じ「生き写し」と絶賛された安藤なつによる男女コンビ。ちなみにカズレーザーはさらば青春の光東口と大学時代にコンビを組んでいた経歴がある。一見するとどちらがボケかわからない程見た目のインパクトが強い2人だが、どっしりしたツッコミの安藤と軽いノリで予測不能のボケをするカズレーザーという役割。内容は見た目ほど変化球ではないものの、ブラック過ぎずベタ過ぎないちょうどいい塩梅のネタだったと思う。それでもカズレーザーの「やべー奴」感はそこはかとなく感じ取れた。ボケの発想には非凡さを感じるが、技術・構成の面であまり点数が稼げなかった模様。でも2本目も見たいと思った。
 
馬鹿よ貴方は
去年のTHE MANZAIで注目された異様な存在感のコンビ。ファラオの突拍子も無い不気味なボケを受け入れられるかが全てなので、会場の受け入れ体制が整って無いと厳しい戦いになると思ったが、THE MANZAIの時よりは善戦していた。特に後半の「大丈夫」連呼ゾーンでは観客(と上戸彩)を惹き込んでいた。暫定席で敗退が決まった時の「やっとM-1らしくなってきましたね」はベストコメント賞。
 
のび太風の田中とジャイアン風の武智による好対照なコンビ。と言っても2人の関係性を駆使したしゃべくり漫才ではなく、田中がコントに入り武智が第3者目線でツッコむという形式。前半の伏線を終盤で一気に回収する構成の上手さが目立った。しかし以前THE MANZAIに出た時と同様に大会を通してのインパクトは今ひとつに終わってしまった。あと審査員のパンクブーブー佐藤がコメントしていたように、今回のファイナリストのネタは心の闇が反映された物が多く、それが今のトレンドとは言えこう立て続けに見せられると食傷気味になってしまう部分もある。これは近年のキングオブコントにも言えることで、この流れが今後も続いていくのか断ち切られるのか気になるところ。
 
和牛
世間的には当たり前とされている風潮にボケの水田が難癖をつけていくスタイルで、観ている側がどんどんダメージを受けていく。ツッコミの川西の受け身の芝居も上手い。ただ「結婚式を抜け出す花嫁」というシチュエーションはドラマでは"あるある"でも実際にはまず起こり得ないので、NHK新人お笑い大賞でやった「キッチンでのカップルのやりとり」の方が共感しやすさという点で面白かったように思う。
 
ジャルジャル(初戦1位通過・最終順位3位)
5年前のM-1で漫才の概念をぶち破るようなネタをして物議を醸したコンビ。今回も多少のメタ要素はありつつも、5年前よりはずっと正統派のしゃべくり漫才に寄せていた。とはいえ、審査員の中川家礼二があまり評価してなかったり、Twitter上でも評価が真っ二つに分かれているのを見ると、これだけ賛否両論なネタを作れることに逆に感心する。ネタの内容はコント師らしいある法則に沿って展開するシステム型。しかし礼二が指摘したようにシステムを見せたい感が前面に出過ぎたかもしれない。ここは本当に観る人によって好みが分かれる。
 
銀シャリ(初戦3位通過・最終順位2位)
昭和風の出で立ちでとにかく橋本のツッコミの上手さが際立つコンビ。同タイプの学天即と比べると銀シャリの方がツッコミの主張が抑えめでボケを食い過ぎていない。このコンビはボケの鰻の天然ぶりも味となっているので、冒頭の「ベルリンの!?」で掴んだのは良かった。言い回しの面白さは文句無いのだが、パンブー佐藤の指摘にもあったように題材の平凡さ・漫才の教科書通り感がちょっと勿体無い。もっとこの2人ならではの漫才ができると思う。
 
ハライチ
鉄板のノリボケ漫才を封印して挑んだというだけでもこの大会に対する本気が感じられる。ただいつもと違い岩井のサイコな世界観が前面に出るネタだった分、その世界観を受け入れるまでに時間がかかってしまい澤部のツッコミで笑う体制にならなかった。終盤の贅沢あるある的なくだりでやっと乗ってきたと思ったが、時すでに遅し。岩井が終始噛み気味なのも良くなかった。
 
2005年のM-1以来10年ぶりの決勝。爆笑オンエアバトルでよく観ていたこともあり、当時はこのコンビが好きで応援していた。しかしその時披露したネタはこのコンビの中でも上出来のネタとは言えず、それ以来勢いが落ちてしまった印象がある。今回も当時と同様ボケの関のデブ押しのネタだったが、当時より完全に空気を掴んでいた。会場のウケ量の割に点数が伸びなかったのは、2人のやり取りより言い換えの面白さで笑いを取っていたこと、後半どんどんコントっぽくなっていったこと、途中で2人の役割が入れ替わったことなどが減点対象だったんじゃないかと勝手な推測をしてみたが、一番低得点をつけたチュートリアル徳井のコメントをとりあえず聞きたかった。
 
トレンディエンジェル(敗者復活枠・初戦2位通過・優勝)
このコンビがストレートで決勝行きしなかったと聞いた時点で敗者復活からの優勝もあり得ると思っていたが、やっぱりその通りになった。どんな場面でも笑わせる力があり、加えて時事ネタを積極的に取り入れる貪欲さもある。よくあれだけハゲネタのバリエーションが思いつくなと感心する。こういう軽い芸風のコンビが優勝するのは納得しない人もいそうだが、今回の中で一番自分たちのスタイルを確立していたという意味で個人的に文句無く優勝だった。
 
ネタ以外の部分ではやはり歴代チャンピオンの審査が一番の注目どころだったが、中川家礼二ますだおかだ増田の貫録が凄く、過去の審査員の中に混じっても違和感無いのではと思うほどだった。しかし一番良かったのは全コンビのネタがよくウケたこと。去年のTHE MANZAI、今年のキングオブコントと「なぜここで笑いが起きない?」という場面を何度も観てきたので、それが懸念材料だった。今後もこんな感じでお願いしたい。

世にも奇妙な物語 映画監督編

先週の「傑作復活編」に引き続き、番組放送25周年記念企画として放送された「映画監督編」。以下各話感想。

 
研究室で何者かに殴られ気絶した主人公。気が付くと棺桶の様な箱の中に閉じ込められていた。箱の中にあった誰の物かわからないiPhoneを使って警察に助けを求めるが、なかなか救助は来ず...。
「箱の中に閉じ込められる」というシチュエーションは想像しただけでも恐ろしい。竹内結子がパニック具合を熱演。予告の時点で映画「リミット」のパクリだという指摘がネット上で多く見られたが、結末は違った模様。「懲役30日」にも通ずる、地獄の時間が半永久的に続く恐怖。小さい頃に観てたら確実にトラウマになっていたと思う。
 
幸せを運ぶ眼鏡
主演:妻夫木聡 監督:本広克行(「踊る大捜査線」)
貯金はあるものの結婚に消極的だった主人公が婚活サイトで美女と知り合い、時を同じくして「幸せを運ぶ眼鏡」が届く。その眼鏡からの音声指示に従ったことで主人公は仕事も恋も順調に。しかし自宅で眼鏡のことを彼女に知られてしまい...。
妻夫木聡は2005年「美女缶」以来の出演。今回の話も、謎のアイテムを使って美女と恋人同士になって...という導入は「美女缶」の雰囲気が。冴えない主人公があることをきっかけに人生が好転していくという筋書きは世にもの王道パターン。故にどう落とすのか注目して観ていたが、喋る眼鏡の指示通りに動いていた主人公が本当の気持ちを取り戻すために眼鏡を破壊し、目出度く恋人と結ばれる...と見せかけて実はそれも眼鏡の指示通りで、主人公は幸せを運ぶコンタクトレンズを購入してその後の人生を過ごすというややブラックな内容。テイスト的には「仮婚」に近かった。
 
事故物件
主演:中谷美紀 監督:中田秀夫「リング」
小学生の娘と新居に引っ越してきた主人公は、家の中での奇妙な現象に悩まされるようになる。事故物件ではないかと疑うが、実は主人公は火事で娘を亡くしており、自責の念から娘の幻覚を創り出していたのだった。
中谷美紀は2001年「仇討ちショー」以来の出演。世にもの枠で放送するからにはただの心霊ホラーでないことは予想できたが、蓋を開けてみれば今回の感動枠。前半のホラー部分はさすがに怖く、それだけに最後まで同じテイストで通してほしかったという人もいるだろう。役柄的に中谷美紀のやつれ感がよく合っていた。
 
×(バツ)
主演:阿部サダヲ 監督:山﨑貴(「寄生獣」)
主人公が朝起きると額に×(バツ)のマークが浮かび上がっていた。そのマークは周りの人間には見えないらしく、医者に相談してもストレスだろうと一蹴される。しかし自分と同様に額に×マークのある男と出会い、その男がそれから程なくして死んだことにより、このマークは自分の死期が近いことを表しているのではないかと思い始める。
阿部サダヲは2007年「カウントダウン」以来の出演。「カウントダウン」は何かとんでもないことが起きると思わせて結局大したことは起きないという結末だったが、今回の話は自分は死ぬと思いきや、それ以上にとんでもないことが起きるという結末。感動的に終わるかと思ったが、エボラ出血熱を絡めてくるとは。正直今回のラインナップの中では意外と普通というか、期待を上回ってはこなかった印象。
 
嘘が生まれた日
主演:満島真之介 監督:清水たかし(「呪怨」)
この世は嘘のない世界。主人公はある日、落ちていた財布を持ち逃げしようとしたところを警官に問い詰められ、咄嗟に「自分のです」と主張し事なきを得る。事実と違うことが言えることに気付いた主人公は仲間と結託して詐欺行為で大金を得るようになる。
「嘘の無い世界」という不条理空間の中で「嘘をつく」という当たり前の行為が世紀の大発明のように扱われる、という不条理。発想の勝利。こういう作品は自分の知る限りでは世にもで観たことが無い。マクドナルドや野々村議員らしき人物(演:飛石連休・藤井)を登場させるなど風刺要素もあり。
 
名だたる映画監督を起用したこともあり、平均点の高い回だった。役者の演技が皆上手かったことも大きい。4つ目まで観た時点では正統派でちょっと綺麗にまとまり過ぎかと思ったが、「嘘が生まれた日」のような新しいタイプの作品もあったのは良かった。

世にも奇妙な物語 傑作復活編

今回は番組放送25周年を記念して傑作復活編、映画監督編を2週に渡って放送。1週目の傑作復活編は事前に公式HPでファン投票を実施し上位30作品の中から5作品をチョイスしリメイクするというもの。しかしファン投票によるランキングは作品の人気というよりは出演者の人気ランキングになってしまうという残念な結果に。スタッフも大体どの作品が人気かは把握していたと思うので、投票はせずスタッフの独断で作品を選んでほしかったというのが正直なところ。とは言え、元々の期待値が低かったせいか思いの外楽しめた回だった。

 
昨日公園(主演:有村架純
「2006年 秋の特別編」にて堂本光一主演で放送。親友を事故で亡くした主人公が思い出の公園に足を運ぶと、そこには亡くなったはずの親友の姿が。親友を死なせないために遠回りをさせたり家にいるよう忠告する主人公だったが、何度やっても親友は死んでしまい...。
旧作では男同士の友情、野球のボールがキーアイテムだったが、リメイク版では女同士の友情、フルートに設定が変更。光る雨の演出なども新しく追加。話の大筋は変えず、それ以外の細かい設定をマイナーチェンジしたことにより違った趣の作品に生まれ変わった。ラストが切ない。あと親友役は「女王の教室」「白夜行」で有名な元・子役、福田麻由子
 
「2006年 15周年の特別編」にて松本潤主演で放送。ある日主人公が家に帰ると見知らぬ中年の男がポテチを食べながらテレビを観ている。その男はイマキヨさんと言って不幸な人間にとり憑く貧乏神のようなものだった。友人によるとイマキヨさんにやってはいけない4つの掟があり、4つ目を破ると...。
これはストーリー云々よりイマキヨさんを演じる酒井敏也のビジュアルインパクトが肝の作品。それを感じ取ってかリメイク版も酒井敏也が再登板。ファン投票で1位の作品だったので外すわけにもいかなかったんだと思うが、正直リメイクした意味があまり無いと思った。とんでもない状況に追い込まれている割には主人公が妙に冷静に見えてしまい、この作品の持つ緊迫感や馬鹿馬鹿しさが薄れてしまっていたように思う。菅田将暉あたりのコメディの上手い若手が演じていればもっと面白くなっていたような。
 
ハイ・ヌーン(主演:和田アキ子
1992年のレギュラー放送時代に玉置浩二主演で放送。ある夏の暑い日、定食屋に一人のサラリーマン風の男がやって来る。男は壁に貼ってあるメニューを端から順番に注文していきその全てをたいらげていく。異様な光景に近所の人たちも集まり、いつしか定食屋は黒山の人だかりに。
筋書きとしては男が定食屋のメニューを制覇していくというだけのシンプルな物なので、演出の腕が問われる作品。ただ今回は演出よりもサラリーマン役に和田アキ子という突飛なキャスティングの方に目が行ってしまった感がある。旧作が玉置浩二なので歌手つながりで、ということで思いついたのかもしれないが、これは賛否分かれても仕方ない。無駄に渋い寺島進は良かった。
 
1991年レギュラー放送時代に草刈正雄主演で放送。「自分は何でも知っている」と自負する主人公がある日「ズンドコベロンチョ」という言葉を初めて耳にする。知らないとは言えず「ズンドコベロンチョ」の正体を突き止めようとするが...。
ストーリーテラータモリ自身もお気に入りの作品として挙げていることもあり、この作品が選ばれると予想した番組ファンは多かったと思う。スマホで何でも調べられる時代だからこそリメイクする意味のある作品。一番懸念されたネットで調べる件もなんとか成り立っていたし、オリンピックを絡めたりネットが炎上したりと世相を反映するシーンも多かった。かなり難しいリメイクだったとは思うが秀作。
 
思い出を売る男(主演:木梨憲武
「1994年 秋の特別編」にて小堺一機主演で放送。職を失い妻子にも逃げられ、借金取りに追われる主人公は思い出を売って金に換えるというシステムで借金を返済。しかしかつての思い出は次々に失われていき...。
感動作としてよく名前が挙がる作品だったが、期待以上の出来。とにかく主演のノリさんの演技が素晴らしい。思い出が失われるにつれて痴呆のようになってしまうリアルさや、ラストの涙を浮かべた表情など、真に迫っていた。ドラマ出演は久々とのことだが、器用な人だ。
 
こうして並べてみると、自分が一番世にもを観ていた90年代後半の作品が無いことに気付いた。ホラー、ブラック系の作品が少ないのは映画監督編とバランスを取るためか。いずれにせよ少々不満は残ったがそれなりに楽しめた。

偽装の夫婦vs無痛

水曜夜10時はリアルタイムではTBS「水曜日のダウンタウン」を観ているため、裏の日テレvsフジテレビのドラマ対決は録画して観ることになる。4月期は日テレ「Dr.倫太郎」、9月期は最初日テレ「花咲舞が黙ってない」とフジ「リスクの神様」の両方をチェックしていたが、結局どちらも観なくなってしまった。そして今期、日テレ「偽装の夫婦」のみチェックする予定だったが、フジ「無痛~診える眼~」も3話から観始めた。この2局のドラマ枠はなぜか毎回テーマが被ってしまう傾向にあったが、今期の2作は全くテーマが異なるため、それぞれ違う楽しみ方ができている。

偽装の夫婦は別記事でも言及したが、人間嫌いの主人公・ヒロ(天海祐希)がゲイの元カレ(沢村一樹)と再会し偽装結婚したことをきっかけに人としての温かさを取り戻していくという筋書き。沢村演ずる旦那を始め、息子を結婚させるために余命半年と嘘をつく旦那の母親(富司純子)、いとこであるヒロに想いを寄せるマジシャン(佐藤二朗)、ヒロに猛烈なコンプレックスを抱くいとこ(坂井真紀)、異常に鋭い観察眼を持つヒロの叔母さん(キムラ緑子)、夫にDVを受けて以来レズビアンになったシングルマザー(内田有紀)、正義感が強くヒロを目標にする宅配の兄ちゃん(工藤阿須加)など、超個性的な登場人物を演者がそれぞれ好演しており、各人物のやり取りだけでも楽しめる。大きな事件は起こらないが、周りの人物に振り回されながらも心を開いていくヒロを見守るドラマとなっている。逆を言えばこの濃いキャラクター達を好きになれなければ楽しめないドラマとも言える。

一方の無痛は半年前の一家殺人事件の犯人捜しという大筋があり、そこに人の病状が見るだけでわかる能力を持った医者・為頼(西島秀俊)や犯因症(=殺人を犯す兆候が見られる症状)に侵された刑事(伊藤淳史)、心療カウンセラーの菜見子(石橋杏奈)が関わっていく。これまで菜見子が受け持つ患者・サトミ(浜辺美波)やストーカー化した菜見子の元カレ・佐田(加藤虎ノ介)が犯人ではないかというミスリードがされてきたが、白神院長(伊藤英明)とその秘書(宮本真希)、無痛症のイバラ(中村蒼)も怪しくなってきており、最後まで見ないと犯人がわからないつくりになっている。話の筋は面白いのだが、負傷した菜見子のいる病室に佐田が簡単に出入りできたり、為頼が佐田と接触したにも関わらず捕まえなかったり、ストーリーを進めるためのご都合主義な展開も見られ、そこは勿体無く感じる。この時間帯にしてはグロテスクな描写も多く、観る人を限定してしまうきらいも。
 
キャラクターや会話劇を楽しみたいなら「偽装の夫婦」、どんでんがえしのストーリーを楽しみたいなら「無痛」に軍配が上がりそうで、内容的にはここ数年で一番良い勝負なのではないかと思う。まあフジの方は次クールで枠自体が終了なんですけどね。

どこよりもリアルな医療ドラマ「コウノドリ」

ドラマにおける定番設定と言えば刑事物と医療物だが、10月スタートのドラマのラインナップを見る限り、その傾向は未だ変わっていない様に思える。そんな中で異彩を放っているのが綾野剛主演「コウノドリ」。このドラマも産婦人科を舞台にしているため医療物に括られるが、「ドクターX」の様なスーパードクターも出てこなければ「無痛~診える眼~」「破裂」(いずれも今期スタート)の様なサスペンス要素も無い、最近では珍しいくらいリアリティを追求した医療ドラマである。主人公が産婦人科医とピアニスト2つの顔を持っているという設定は一応あるものの、あくまで妊婦と主産現場の話がメインという体裁をとっている。最も凄いのはドラマ内に出てくる新生児が皆本物で、それが1人や2人ではないということ。それだけでもこのドラマの本気が伝わってくる。第3話ではマタ旅(妊娠した状態で旅行に出ること)や妊婦の喫煙問題を取り上げた他、四宮(星野源)が患者に厳しくするようになった理由が明らかになったり、母親が妊娠中に風疹に罹ったことで視覚障害を抱えて産まれた少女のエピソードなど、本当にこれを全部1時間でやったのかというくらい盛りだくさんな内容だった。しかし決して散漫になること無く全ての問題をスムーズに繋げてみせたのには感心。4月期のドラマ「Dr.倫太郎」は精神科を舞台にした作品で、こちらも1話につき複数のエピソードを同時進行していたが、精神科に関する情報よりも主人公と他の医者や患者との色恋沙汰の方がメインになっていたきらいがあり、「医療物かと思ったら恋愛物だったでござる」の様相を呈していた。同時期に放送していた「医師たちの恋愛事情」の方がハナから医者の話をする気が無い分親切だったかもしれない。キャストで言えば患者としてゲスト出演する俳優が清水富美加(まれ)、山田真歩、山田望叶花子とアン)、和田正人ごちそうさん)など朝ドラ出演者率が高いのが気になる。こういった傾向は他局のドラマでも度々見られるが、TBSはこういった俳優たちの使い方の上手さにおいて一歩抜きん出ていると思う。

ブラックとバカバカしさ〜平成27年度NHK新人お笑い大賞

NHK新人お笑い大賞を観た。
 
元々は「NHK新人演芸大賞」という名称だったが、去年からタイトルが変更になった。過去の優勝者には爆笑問題などがいて、現存するお笑い賞レースの中では歴史が長い。以下各ネタの感想。

 Aブロック

 スーパーニュウニュウ
コント。娘がボンド塗れの手で父親に目隠しをして離れなくなり、その間に母の家出、父の浮気問題が発覚していく。男女コンビ。オープニングで自作の鎖鎌を持って登場するあたり、アウトローの匂いが感じられる。去年の巨匠もそうだったが、ネタの内容が全くトップバッター向きじゃない。NHKの番組でこのネタをやったこと自体が面白かった。
 
ロビンソンズ
コント。不良息子と国会議員の父。奇しくも親子ネタが続いたが、どんどん取り乱していく父親(スーパーニュウニュウ)と淡々と息子を追い詰めていく父親(ロビンソンズ)という対比があった。元々はザ・ゴールデンゴールデンというトリオで北澤の顔面をイジるネタをやっていたが、コンビになってからは会話の内容で笑わせるネタをするようになった。司会のフットボールアワー後藤の言葉を借りれば高低差あり過ぎで耳キーンレベルのシフトチェンジだが、後にアインシュタイン稲田というモンスターが控えていることを考えれば、それで正解だったかもしれない。
 
アキナ
コント。前2組がブラックな設定のネタだったが、アキナは友達同士でクイズを出し合うという平凡な設定から徐々に黒さが見えてくる構成だったのが他2組との差だったかもしれない。感情が揺れ動く様を丁寧に描くコントはこのコンビの真骨頂。先日のキングオブコントで披露したネタではその丁寧さが裏目に出ていたが、今回はハマった。山名が意味も無くずっとヘルメットを被っているのが好き。
 
漫才。稲田の顔面がとにかくインパクト大だが、ネタの設定はラジオDJというオーソドックスな物で、少々物足りなかった。
 
アキナ勝ち上がり。
 
Bブロック
 
 コント。タクシーの乗客が犯罪者風の素振りを見せる。これだけブラックネタが多いということは、こういうのが東京ライブシーンにおける主流なんだろうなあ。
 
チョコレートプラネット
 コント。鶴の恩返し現代版。長田得意の業者キャラだが、去年この大会とキングオブコントで披露したポテチ開封業者のコントが秀逸過ぎた為、設定の時点ではさすがに既視感が。しかし小道具が出てくるとやっぱり笑ってしまった。絶対このコントでしか使わないだろアレ。
 
和牛
 漫才。彼女の手料理。元料理人でもある理屈屋の水田のキャラが炸裂。男性目線でも女性目線でも楽しめる出色のネタだと思う。勝ち上がってもおかしくなかったが、チョコプラの馬鹿馬鹿しさに軍配が上がった。
 
インディアンス
 漫才。内容としてはお調子者の田渕がダジャレを連発しているだけなのだが、くだらな過ぎて笑ってしまう。でもTHE MANZAI認定漫才師お披露目SPみたいなユルい空気感で見たいタイプ。関西のコンビだが、田渕のキャラがザキヤマ、声が南海キャンディーズ山里に似ているせいか関東っぽさを感じる。
 
チョコレートプラネット勝ち上がり。
 
アキナ VS チョコプラという去年のキングオブコントでも対戦した組み合わせに。
 
アキナ2本目。漫才でよくある「俺○○やるからお前△△やって」というくだりをコント形式で。「漫才でもできるだろ」というツッコミを見越してその実コントでしかできない展開に持ち込んだ。審査員の渡辺正行が言った「本当にお笑いが好きなんだな」というのが伝わってくる。
 
チョコプラ2本目。助けた亀からの恩返しが無いとクレームしに来る客。1本目のコントともリンクしている内容で、設定の時点で客席から笑いが。小道具は無かったが、受け側の松尾の演技にも気を配っている感じが良かった。
 
満票でチョコレートプラネット優勝。去年優勝しててもおかしくなかったので、順当な結果。
 
先日のキングオブコントでは東京のライブシーンで活躍する芸人が悉く評価されなかったが、この大会でもその傾向は変わらず。ブラックネタをする芸人の多さが目に付いたが、その手のネタはかもめんたるが極めた感があり、こう立て続けに見せられるとさすがに食傷気味になる。コロコロチキチキペッパーズにしろチョコプラにしろ、シーンの流行関係無く自分たちが面白いと思うネタをしたコンビが評価されるのがこれからの傾向になってくるのかもしれない。

進化してるね 番組って

有吉弘行のドッ喜利王」が面白かった。
 
通常放送されている「水曜日のダウンタウン」が休みだった代わりに単発番組として放送された番組で、事前に収録した大喜利番組の3ヶ月後にその芸人が回答した内容のことが実際にドッキリとして自分の身に降りかかったらどうなるか?という実験的バラエティ。正直この番組説明だけでは積極的に観ようとは思わなかったかもしれない。今回自分が観ようと思ったのは、この番組のプロデューサーが「水曜日のダウンタウン」と同じ藤井健太郎氏だったからだ。藤井Pの手掛けた番組と言えば「クイズ☆タレント名鑑」「テべ・コンヒーロ」「クイズ☆正解は一年後」などが代表的で、その攻めた姿勢とテレビっ子心をくすぐる番組内容から、一部のディープなテレビウォッチャーから絶大な信頼を置かれているプロデューサーである。
 
そして今回の「ドッ喜利王」も予想を上回る傑作&問題作だった。芸人によるその場の自由な発想が元になっているため、ドッキリの内容も「謎のボタンを押すとハッピーターンが1個天井から落ちてくる」という素朴な物から「採血の時看護師が噛みついて血を吸ってくる」といったクレイジーな物まで幅広かった。しかし3ヶ月も経つと自分の書いた大喜利回答の内容は忘れてしまうらしく、どの芸人も新鮮なリアクションをしていた。ただ記憶の片隅には残っているため、バイきんぐ西村などは「自分が以前夢で見た」「デジャヴだ」と錯覚するという興味深い検証結果も生まれた。
 
また、千鳥・ノブの「心霊写真にタキシードねこが写り込む」という回答に対し、ノブが生み出した架空の生き物「タキシードねこ」を実際に写真に登場させたり、千鳥・大悟の描いた謎の楽器のような物体を実際に作ってしまったりと、芸人の独創的な発想も忠実に再現。その極みだったのが野性爆弾・くっきーが発想した「よだれ玉を着用した運転手」と「ラジオ番組・生稲晃子の野猪(やいの)の血抜き」の実写化。こんな物を実際に再現するのもまずおかしいし、ドッキリ番組でも初めて見る光景だった。
 
その他にも、あまり大喜利のイメージの無かったFUJIWARA原西とバイきんぐ西村がIPPONグランプリなら大健闘してそうな回答を連発してたり、チョコレートプラネット長田のドッキリ「タクシー運転手の声がめちゃめちゃ大きい」がまんまチョコプラのコントみたいだったりと、大喜利パート単体でもドッキリパートとの化学反応的な部分でも楽しめる要素がたくさんあった。
 
大喜利×ドッキリ」という組み合わせでこんなに面白い物を見られるとは思わなかった。ただ残念なのは番組の構造上2回3回と繰り返し収録できる物では無いということ。さらに視聴率は7%と低い水準。こうやって絶賛している自分ですら観る前はそれほど興味を惹かれた訳では無いことを考えれば、この数字はある程度予想できる物だった。しかしおそらく2回目の放送が企画されないであろうことを考えると、この結果は勿体無いと思う。それでも懲りずにこういう進化した番組を作って欲しい。