何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

配役の妙「偽装の夫婦」

「偽装の夫婦」第1話を観た。
 
主人公の嘉門ヒロ(天海祐希)は人嫌いの図書館司書。ある日ヒロはかつて唯一愛した元カレと25年ぶりに再会するが、彼が実はゲイだったことが発覚。しかも自分の母親がガンに侵され3か月の命なので、母を安心させるため偽装結婚をしてくれとヒロに頼んできた。冗談じゃないと思うヒロだったが、自宅アパートにある大量の本の重みで床を壊してしまい、住居を無くした上300万の修理費も請求されてしまったため、結局元カレに頼ることになる。
 
天海が演じるヒロというキャラクターは、容姿の美しさに加え何をやらせても上手く出来てしまう故に周りの人間に劣等感を抱かせてしまい、その結果本気を出さず地味な生活をするようになる。天海の「出来る女」イメージを逆手に取ったような役だ。シンプルなヘアメイクと服装に冷めた表情は以前天海が主演した「女王の教室」を彷彿とさせる。
 
その他の登場人物もキャスティングが絶妙で、ゲイの元カレ役の沢村一樹を始めとして、魔女のような喋り方をするヒロの叔母にキムラ緑子、売れないマジシャンのいとこに佐藤二朗、ぶりっ子風のもう一人のいとこに酒井真紀とコメディ巧者の面々が並ぶ。また、元カレが好意を寄せる宅配の兄ちゃん役が工藤阿須加というのもリアル。しかし第1話で一番強い印象を残したのは謎のシングルマザーを演じた内田有紀だったかもしれない。ラストでヒロに対し、まるで宗教の勧誘でもするかのような口調とイッちゃってる目で「あなたのことが好きなんです」と告白するシーンは、それまで「内田有紀最近この手の役(シングルマザー)多いな」としか思ってなかっただけに面喰らった。
 
第1話を観た時点では次週も観たくなる面白さだったが、このドラマの一番のネックは脚本が遊川和彦ということ。遊川と言えば「家政婦のミタ」を大ヒットさせた直後に朝ドラ「純と愛」で総スカンを喰らったことでお馴染みで、好き嫌いの分かれる作風と言える。しかし、Yahooニュースのインタビューで遊川はこう発言している。

これまで僕が作り続けてきた作品は、最初にバシバシと殴って不愉快な思いをさせた上で、最後に大丈夫かと優しくする、といったドラマでした。でももうすぐ還暦になるので、そういったものを全部捨てようという決心をしました。もう殴るのをやめます(笑)。これから10年は、楽しく、そして観終わった後で考えさせられるようなドラマを書きたい。少なくとも、本人の意識としてはそういうドラマを作りたいなという気持ちになっているんです。
今回は最終回を見ても不愉快な思いはしませんから。『○○妻』の最終回では、何てことをしやがるんだと言われましたけどね、主人公を死なせたんで(笑)。それでひるんだわけでもないですが、やはりエンターテインメントなので、もっとたくさんの人に喜んでもらいたいなと思ったんです。だからここで変わるぞ、と宣言をしているわけです。人に変わってほしいと言っているんだから、自分だって変わらないといけないと思う。そのつもりでやっています。
 この発言通りであれば、「偽装の夫婦」は今後も第1話の面白さをキープしたまま進んでいく可能性はある。少なくとも配役はバッチリなので、キャラクターを楽しむドラマになるかも。