何でもアリの

テレビ番組の感想を綴るブログ

2016春ドラマ総括

いつになく良作が多かった(気がする)春ドラマ。そんな中でも出色だったのは重版出来!。漫画の編集部という地味目な題材と裏の僕のヤバイとの食い合いもあって視聴率はそこまで伸びなかったものの、話の作りの丁寧さ、キャラクターの立ち方、原作の生かし方は今季の中でも飛び抜けていたように思う。TBSラジオ「たまむすび」の中で映画評論家の町山智浩も絶賛してたのはそのキャスティング。豪快なタイガースファンの編集長を演じた松重豊、優しさの中に闘志を燃やすベテラン漫画家を演じた小日向文世、主人公の先輩編集者を持ち前の色気でもって演じたオダギリジョー、イヤミで現実主義な編集者を演じた安田顕、屈折した天才新人漫画家を演じた永山絢斗など、このドラマだけで助演男優賞を独占しそうな勢いだった。主人公は当初能年玲奈が演じる予定だったそうで、確かにその方が話題性はあったと思うが、これだけの個性的なキャラクター達を引き立てるという意味では結果的に黒木華が適任だった。全体的にホロッとする話が多かったが、ムロツヨシ演ずる漫画家アシスタントがメインの7話は特に泣けた。

 

黒柳徹子の自伝的エッセイが原作のトットてれび満島ひかりの好演に尽きる。レトロな髪型や衣装を纏う姿はまさにお人形さんのそれだし、徹子特有の早口でピントのズレた話し方もマスター。演出面も華やかで「テレビの良い時代」を感じることができた。

 

火の粉はフジテレビの昼ドラ枠撤廃後の代わりの枠として深夜11時台からスタート。ノーマークだったがこれがまた面白かった。狂気の主人公を演じたユースケ・サンタマリアは言うまでもなく、それに振り回される優香、伊武雅刀朝加真由美大倉孝二などもそれぞれ好演。マジなのかネタなのか解りかねる迷シーンのオンパレードで回を増すごとに惹きつけられた。

 

ゆとりですがなにかはゆとり第一世代(自分と同い年)を主人公にその下の世代や上の世代の複雑な関係性を描いた意欲作。初回こそ宮藤官九郎らしからぬシリアス展開で肩透かしを食らったが、話が進むにつれクドカン節が炸裂し、役者の演技もどんどんヒートアップ。もともと演技力に定評のあった柳楽優弥安藤サクラは勿論の事、強烈なゆとりモンスターを演じた太賀は今後要注目の役者。また、童貞小学校教師を演じた松坂桃李もオタク風の演技が板についており、イケメン俳優の枠を取っ払ったように見えた。

 

初回から最終回までずっと高水準の面白さを維持していた重版出来!が個人的1位だが、その他の作品も他クールなら1位でもおかしくないほどのクオリティだった。以下個人的作品・俳優賞。助演男優賞候補が多すぎて迷ったが、同時期の真田丸での好演も考慮に入れて小日向文世で。

 

作品賞              重版出来!

主演男優賞      ユースケ・サンタマリア(火の粉)

主演女優賞      満島ひかり(トットてれび)

助演男優賞      小日向文世(重版出来!)

助演女優賞      安藤サクラ(ゆとりですがなにか)